2014 Fiscal Year Research-status Report
III-V族化合物半導体ベーススピントランジスタの開発
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26630150
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中根 了昌 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422332)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 電子デバイス / 電子材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最初の目標は、半導体基板上に堆積した金属と半導体とを熱処理により合金化することによって、スピン電界効果型トランジスタの強磁性メタルソースドレイン電極を作製する技術を開発することである。 MOVPE法によってInP(001)基板上に作製したIn組成53%のInGaAs基板を用いた。超高真空チャンバー内でEB蒸着法とKセルを用いてMnNi薄膜を堆積して、一度大気に取り出した後に窒素雰囲気中のハロゲンランプによる急速加熱処理によって合金化を行った。表面に残留した未反応金属層は塩酸により除去を行った。結晶構造はX線回折(XRD)法によっておこない、磁化測定はSQUID磁力計によっておこなった。合金化の主な条件は熱処理温度である。 Mnが100%の場合は、合金化後に表面の色が茶色や青色になった。これは、大気に取り出した際にMn薄膜が酸化したためと考えられる。XRDでは、様々なMn-As組成比を持つMnAs化合物(Mn2As、Mn5As4など)に類似した結晶構造が得られた。また、強磁性MnAsの結晶構造は得られなかった。次にMnの酸化を防ぐ目的でNi薄膜でキャップを行った後に大気に取り出した。合金化した後のXRDパターンはキャップをしていない場合とほぼ変わりがなかった。次に、MnとNiの同時蒸着によって、MnとNiの組成比を変えたMnNi薄膜を基板上に堆積を行い合金化を行った。Mnの組成比が50%以上では、Mn100%薄膜で作製した結晶構造に近い結果が得られた。Mnの組成比が30%以下では、単一の相ではないものの、強磁性MnAsと同じ結晶構造を持つ合金が得られた。この合金の磁化特性を評価したところ、磁化曲線ではヒステリシスが観測された。しかしながらMn、Ni原子一つ辺りのモーメントは0.1ボーア磁子程度と非常に低い値であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
材料研究は実験をしてみないとわからない側面が強いが、Ni薄膜で容易に作製できるNiAs型の結晶構造が、Mn薄膜では作製することが困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
InGaAs基板ではなくInP基板を用いて、今年度と同様の実験をおこなう。強磁性MnAsと同じ結晶構造を持つ強磁性MnPが作製できれば、スピン電界効果型トランジスタのソースドレイン電極に利用することが可能である。
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