2014 Fiscal Year Research-status Report
広帯域光VCOによるコヒーレント光通信用高精度光位相制御技術の確立
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26630168
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
葛西 恵介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80534495)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 信号処理 / 光PLL / 音響光学変調器 / コヒーレント光通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は広帯域なFM (Frequency Modulation)応答特性を有する音響光学変調器(AOM: Acoust-Optic Modulator)の作製と、これを用いた光VCO (Voltage Controlled Oscillator)による光PLL (Phase-Locked Loop)回路の作成ならびに性能評価実験を行った。一般にAOMより出力される回折光の回折角度は素子を伝搬する音響波の速度に反比例する関係がある。溶融石英やカルコゲナイトガラスを媒体とした通常のAOMではこの伝搬速度が遅く回折角度が大きくなってしまうため、広帯域な周波数応答特性を実現することは容易ではない。そこで本研究では通常の媒体よりも2倍以上速い音響速度特性を有するInPを媒質とすることによって回折角度の拡がりを抑制し、AOMのFM応答の広帯域化を図った。その結果、通常では0.1 dB帯域が±100 kHz程度であった応答特性を±2.5 MHz程度まで増大することに成功した。本AOMとRF-VCO、狭線幅ファイバレーザを組み合わせて光VCOを作成し、これを局発光源として用いた光PLL回路により基準信号として用いたファイバレーザ出力信号への光位相同期実験を行った。その結果、SSB (Single Sideband)位相雑音は10度以上と大きいものの、安定なIF(Intermediate Frequency)信号を生成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はInPを媒質としたAOMにキャッツアイ光学系を適用した広帯域AOM素子の設計・作製ならびにこれを用いた光VCOによる光PLL動作の評価が目標としていた。これに対し今回は初めにキャッツアイ光学系ではなく通常の光学系を用いたInP-AOMの作製・評価ならびに光PLL評価実験を行った。媒質をInPとすることでキャッツアイ光学系を採用せずとも広帯域化を図ることが可能であることを明らかにし、また光PLL実験を通じて本AOMの有用性を示すことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はInP-AOMにキャッツアイ光学系を採用することによりAOMのFM特性のさらなる広帯域化を図る。また本AOMと狭線幅レーザを組み合わせた広帯域・狭線幅光VCOを作成し、これを局発光源として用いた高精度な光PLL回路を実現する。さらにコヒーレント伝送系に本光PLL回路を適用し、多値コヒーレント伝送を行うことで本回路の有用性を実証する。本実験ではまず始めに10 Gsymbol/s, 64 QAM信号の150 km伝送に取り組む。本伝送結果を従来の光VCO(例えば従来のAOMを用いた形態やAOMの代わりにLN光変調器を用いた形態)を用いて行った結果と比較し、広帯域VCOの優位性をコンステレーションの広がり、即ちEVM(Error Vector Magnitude)を用いて明らかにする。また多値度を128, 256と増大させて超多値コヒーレント伝送の高性能化を図る。
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