2014 Fiscal Year Research-status Report
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26630174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山里 敬也 名古屋大学, 教養教育院, 教授 (20252265)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 確率共鳴 / 微弱信号 / sub-threshold signal / 極低電力通信システム |
Outline of Annual Research Achievements |
確率共鳴現象とは、システムへの入力雑音の増大と共にそのシステムの応答が向上する現象である。本研究では、確率共鳴現象の通信への応用を検討する。具体的には、確率共鳴現象を応用することで従来の受信機では感知することすらできない微弱信号(sub-threshold signal)による通信の実現に挑戦する。確率共鳴現象を通信へ応用することで微弱信号(sub-threshold signal)を用いた極低電力通信シス テムが実現でき、また、エネルギーハーベスティングを利用することでグリーンワイヤレス、グリー ンネットワークを実現できる。本研究では、そのための基盤技術の構築を目的とする。 本研究で挑戦することは 従来の受信機では感知することすらできない微弱信号による通信の実現である。具体的には、研究代表者(山里)の統括のもと確率共鳴受信機に関する以下の2つのサブテーマを設け検討していく。 (a) 従来の受信機では感知することすらできない微弱信号を用いた確率共鳴受信機の基礎研究 ここでの達成目標は、従来の受信機で関知できる最小の受信信号電力の 1/2(-6dB)に満たない信号 でも受信できる確率共鳴受信機の研究開発である。これを、申請者等のこれまでの研究成果を発展させることで実現する。 (b) 雑音(干渉)に埋もれた微弱信号を用いた確率共鳴受信機の基礎研究 このサブテーマは、田所幸浩(研究分担者)および高梨昌樹(連携研究者)により主に検討を行う。ここでの達成目標は、受信信号に対して干渉信号電力が大きい場合でも従来からある線形フィルタリングや干渉キャンセラと比較して 6dB 以上の通信特性が改善できる確率共鳴受信機の研究開発である。これを、申請者等のこれまでの研究成果を発展させることで実現する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、 (a) 従来の受信機では感知することすらできない微弱信号を用いた確率共鳴受信機の基礎研究 についての研究を行った。具体的には、確率共鳴受信機の基本特性についての理論解析および簡単なスケールモデルを用いた実験を行った。通常の無線通信受信機の前段に確率共鳴受信機を置き、これにより従来の受信機で関知できる最小の受信信号電力の 1/2(-6dB)に満たない信号でも後段の従来無線受信機で受信できるような信号レベルまで持ち上げてやることで、受信できるようにした。この前段のadd-on SR deviceを新たに開発し、その有効性を確認した。このadd-on SR deviceとして必要な機能、設計についての知見を新たに得た。また、後段の従来無線受信機にはソフトウェア無線装置を用いたため、次年度以降に予定している変復調方式の検討などの基礎検討にも利用できることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、平成26年度の検討を発展させ、より現時的な通信環境を想定し検討を行う。 具体的には信号同期をいかにして確立するのか、という点に焦点をあて検討する。 本研究で想定する受信信号は、そもそも受信機では感知すらできない信号である。このような状況 のもと、確率共鳴受信機で故意に雑音を加えることで受信できるようにするのであるが、信号そのも のが感知できない状況での信号同期はより困難を伴うものと想定される。一方、信号同期は受信の基 本であるため、この実現無しに受信はできない。平成27年度以降は、主に信号同期に焦点をあて、 その基本特性についての理論解析および簡単なスケールモデルを用いた実験を行い、従来の受信機で 関知できる最小の受信信号電力の 1/2(-6dB)に満たない信号でも受信できることを検討していく。
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Causes of Carryover |
確率共鳴現象の解析を行うワークステーションの性能が、当初想定してものより格段高い性能が必要になることが判明した。そのため、平成27年度の物品費と合算して購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、次年度使用額を用いてワークステーションおよび科学技術演算ソフトウェアを購入し、確率共鳴現象による超微弱通信を実現する確率共鳴受信器の数値解析およびシミュレーションを行う。とりわけ、確率共鳴を発現する様々な雑音および非線形素子について検討を行い、最適受信機の構成を探る。
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