2014 Fiscal Year Research-status Report
機能性流体でコアを充填した光ファイバによる電磁界分布センシング技術の開発
Project/Area Number |
26630180
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 洋輔 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (30630818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光ファイバ / ブリルアン散乱 / 機能性流体 / 電磁界計測 / 分布型センサ / 毛細管現象 / 電気粘性流体 / 磁気粘性流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「中空コア光ファイバのコアを機能性流体で満たし、ブリルアン散乱信号の解析に基づく電磁界の分布型センシングを実現すること」である。この目的を達成するため、本年度は(1) 中空コア光ファイバに毛細管現象を用いて液体を充填する手法の検討、(2) 本目的に適した機能性流体の選定と準備、(3) 液体中の微弱なブリルアン散乱光を検出する実験系の検討、を行った。以下、それぞれについて詳細を述べる。 (1) 中空コア光ファイバは高価なので、導波機能は有さないものの同様の構造を有するキャピラリーチューブを用いて基礎実験を行った。中空部分の内径の異なる数種類のチューブを用意し、それぞれに対して着色した液体(脱気水・エタノール・電気粘性流体)を毛細管現象により注入した。各内径に対して液体の浸入距離の時間変動を測定したデータは、今後の実験の基礎となる。(2) 機能性流体には電気粘性流体や磁気粘性流体、磁性流体、電界共役流体などが知られているが、本研究ではまずは電気粘性流体に着目した。中でも、近年香港科技大学のグループにより発見された巨大電気粘性流体は本研究に適していると考えられ、彼らに材料提供を依頼した。(3) ブリルアン散乱信号を観測するためには、液体中の光の伝搬損失が低いほど好ましい。これまでに巨大電気粘性流体の光伝搬損失の詳細は報告されていないため、我々は香港科技大学のグループに依頼し、光伝搬損失を低減した材料開発を進めて頂いている。一方で、光伝搬損失が比較的高い材料でもブリルアン散乱信号を検出できるような観測系が必須であり、既存の系に対してダブルロックイン検波を施すことでこれを実現する取り組みを続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画として、(1) 用いる機能性流体の選定と準備、(2) 中空コアへの充填、(3) ブリルアン散乱信号の検出を掲げていた。(1)については、達成することができた。(2)については、中空コア光ファイバではなくキャピラリーチューブを用いた実験ではあるが、達成することが出来た。(3)も試行したものの、基本的な実験系ではブリルアン散乱信号を検出することができなかった。チューブに導波機能を持たせると同時に、ロックイン機構を有するブリルアン観測系を構築することで達成したい。以上の理由から、本年度の進捗はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、(1) 機能性流体中の音速の電磁界依存性の調査、(2) ロックイン機構を有するブリルアン観測系の構築、(3) 中空コア光ファイバ中に充填した機能性流体中のブリルアン散乱の観測、を計画している。以下、それぞれについて詳細を記す。 (1) 一般にブリルアン散乱特性は物質中の音速に大きく影響を受ける。そのため、電気粘性流体や磁気粘性流体中の音速が印加された電場・磁場に対してどのように依存するかを調べることは、予め機能性流体中のブリルアン散乱特性を予想するのに有意義である。手法としては、以前に我々が開発した超音波のバースト波を用いた時間領域法を用いることを考えている。(2) 機能性流体中は光伝搬損失が高くブリルアン散乱が極めて微弱であると予想されるため、従来のブリルアン観測系では検出が困難である可能性が高い。そこで、従来の観測系にロックイン検波を適用して、測定感度を劇的に向上させたい。強度変調器を用いて参照光にチョッピングを施すことを考えている。(3) 実際に中空コア光ファイバ(あるいは、キャピラリーチューブ)を機能性流体で充填し、その中のブリルアン散乱信号を感度を向上させた観測系を用いて検出する。用いる機能性流体は、巨大電気粘性流体が第一候補である。検出後は、印加電磁界強度に対する各種特性(周波数シフトやストークスパワー、線幅など)の依存性を明らかにし、センシング応用の可能性について検討する。
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