2015 Fiscal Year Research-status Report
機能性流体でコアを充填した光ファイバによる電磁界分布センシング技術の開発
Project/Area Number |
26630180
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 洋輔 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (30630818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気粘性流体 / 機能性流体 / 音速測定 / 光ファイバ / ブリルアン散乱 / 分布型センサ / 電磁界計測 / 超音波計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、「中空コア光ファイバのコアを機能性流体で満たし、ブリルアン散乱信号の解析に基づいて電磁界の分布センシングを実現すること」である。この目的を達成するため、本年度は、(1) 電気粘性流体中のブリルアン散乱検出の試行、(2) 電気粘性流体中の音速(ブリルアン散乱特性に直結)を測定する実験系の構築、(3) 電気粘性流体中の音速の濃度依存性の解明、(4) 電気粘性流体の音速の電磁界強度依存性の測定系の設計、を行った。以下、それぞれについて詳細を述べる。 (1) 昨年度までに開発した毛細管現象に基づく手法により電気粘性流体をキャピラリーチューブに充填し、実際に光学系に組み込んでブリルアン散乱の観測を試みた。検出自体には成功しなかったが、ブリルアン散乱信号検出のためには、電気粘性流体自体の光伝搬損失を低減する必要があることや、チューブ自体に導波機能を持たせる必要があることが明らかになった。(2) そこで、現段階でもブリルアン散乱(音響波による散乱)特性を推定するために、電気粘性流体中の音速を測定する実験系を構築した。この実験系では、電気粘性流体を円柱状の容器に注入し、振動子から矩形パルス信号を伝搬させる。透過波が検出される時間を振動子の位置の関数として測定すれば、その傾きから音速が計算できる。(3) 音速測定の結果、今回用いた巨大電気粘性流体中では 957 m/sと見積もられ、水中の値(約1480 m/s)の約2/3であることが判明した。また、質量パーセント濃度依存性も調査し、濃度の増加に伴って音速も増加することを明らかにした。(4) 電磁界センシングへの応用を見据え、電気粘性流体中の音速の電磁界強度依存性を調査することは極めて重要である。そこで、(2)で構築した測定系を小型化し、流体と接する2箇所に電極を取りつけることで、目的の測定を可能にする実験系を設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画として、(1) 機能性流体中の音速の電磁界依存性の調査、(2) ロックイン機構を有するブリルアン散乱観測系の構築、(3) 中空コア光ファイバ中に充填した機能性流体中のブリルアン散乱の観測、を掲げていた。(2)を達成し、それを用いて(3)(中空コア光ファイバではなくキャピラリーチューブを用いた)を試行したが、ブリルアン散乱の観測自体は成功しなかった。しかし、流体自体の光伝搬損失の低減とチューブ自体への導波機能付与の重要性を明らかにすることができた。さらにこれを受けて、(1)を推進した。機能性流体中の音速を測定する実験系を新たに構築するとともに、それを用いて、巨大電気粘性流体中の音速は水中の値の約2/3であること、および、質量パーセント濃度の増加に伴って音速も増加することを明らかにした。電磁界依存性を測定する実験系も設計は完成しており、現在機械加工をしている最中である。以上の結果は、学会発表をするとともに、論文誌にも投稿すべく原稿を執筆中である。また、学会発表の際に、本手法に興味を持たれた農工大の先生との共同研究が開始している。以上のように、当初予定していた実験自体に全て成功しているわけではないものの、思わぬところで波及効果もあり、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、(1) 電気粘性流体中の音速の電界依存性の調査、(2) 刺激応答性ハイドロゲル中のゾル-ゲル転移中の音速変化の解明、(3) 中空コア光ファイバ中に充填した電気粘性流体中のブリルアン散乱の観測および分布型電磁界センシングへの応用、を計画している。以下、それぞれについて詳細を記す。 (1) これまでに構築した電気粘性流体中の音速を測定する実験系を小型化し、電極を取りつけることで、音速の電界依存性を測定する実験系を実装する。さらに、これを用いてさまざまな種類の電気粘性流体(均一系および粒子分散系)中の音速の電界強度依存性を解明する。この特性は電界センシングの感度を決定するものであり、最大の感度を与える種類やその理由を検討する。(2) これまでに構築した実験系は、電気粘性流体中の音速を高速かつ高精度に測定できるという特徴を有する。これを利用し、農工大と共同で、イモゴライト(円筒状粘土鉱物)による刺激応答性ハイドロゲル中の音速、およびそのゾル-ゲル転移中の変化を測定する。本結果は、刺激応答性ハイドロゲルのゾル-ゲル転移のメカニズム解明に直結すると期待されている。(3) 中空コア光ファイバ中に充填した電気粘性流体中のブリルアン散乱を観測する。これまでに得た知見を活かし、光伝搬損失を低減した巨大電気粘性流体を提供元である台湾のグループに作製して頂き、これを用いる。また、キャピラリーチューブではなく導波構造を有する中空コアフォトニック結晶光ファイバの利用を考えている。さらに、別プロジェクトで感度を向上させたブリルアン散乱観測系に組み込むことで、ブリルアン散乱信号を観測する。その後、光ファイバ全体および部分的に電界を印加し、その検出を試みる。分布測定の手法としては、光周波数を変調する相関領域手法の利用を検討している。
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[Journal Article] Real-time displacement measurement system using phase-shifted optical-pulse interferometry: application to a seismic observation system2016
Author(s)
M. Yoshida, Y. Hirayama, A. Takahara, M. Kashi, K. Takeuchi, T. Ikeda, F. Hirai, Y. Mizuno, K. Nakamura, H. Kimura, N. Ino, and W. Inoue
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Journal Title
Jpn. J. Appl. Phys.
Volume: 55
Pages: 022701
DOI
Peer Reviewed
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