2015 Fiscal Year Research-status Report
セミアクティブ型救命救急位置検知システム(S&R-LBS)の開発
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26630181
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧野 秀夫 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80115071)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 位置情報 / 患者情報 / Web-GIS / 可視光通信 / BLE |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:災害現場において,重篤傷病者位置を自動探査・転送するセミアクティブ型救命救急位置検知システム(S&R-LBS)の開発を目的とする.申請者は過去の中越地震(2004年),中越沖地震(2007年),及び東日本大震災(2011年)での災害対応の経験から,災害現場におけるDMAT(救急医療チーム)支援システムを開発してきた.しかし,残念ながら真に発災現場で活躍できるIT機器は極めて限られている.その主な原因は人的資源の不足である.すなわち,救援に向かうDMATの数は限定されており,彼らが最優先で実施するトリアージ作業に追加して当該情報送信用の端末操作や確認作業は不可能である.これらは,申請者が過去3回参加した新潟県総合防災訓練においても痛感した事実である.そこで,トリアージタグ取り付け後の重篤患者所在マップとその情報送信を自動で行うシステムを開発する. 方法: 本システムの開発のためには,1)ネットワーク型体温計など市販装置を利用できる範囲で,極力バイタルデータ取得を自動化する.2)現場の情報を簡単な操作で基幹病院に転送する.3)基幹病院側では,GISと組み合わせた患者情報表示システムを用意し,個人の状態のみならず災害地域全体の傾向を地図上で把握する機能がもとめられる.さらに,4)救急テント内での患者位置や搬送中の患者位置を出来るだけ正確に補足する必要もある.これらの機能を実現するために,1)バイタルデータ取得のために,タブレット端末を情報中継基地として利用する方式,2)得られた情報を,httpsプロトコルにより病院側データベースに自動送信する機能,3)Web-GISによる患者位置表示とデータ処理,4)振動,可視光通信による照明器具位置,BLE及び屋外移動中の高精度位置検出手法(GNSS+QZSおよび慣性航法装置)によるリアルタイム位置把握機能をそれぞれ検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的テーマ実現のために,まず,1) 災害現場における被災者情報(バイタルサイン)の自動取得であるが,既存装置を応用しているため「送信ボタンを押す」といった作業は必要となるものの,体温,血圧,酸素飽和度,活動量,体重といったデータを自動送信することが可能となった.次に,2)複数の検出要素を用いた屋内外測位手法の評価についてであるが,振動センサについては3台の加速度センサを用いた位置取得と位置解析ソフトウェアを開発した.現在,この精度について検証中である.次に,屋内の照明器具を用いた測位手法については,魚眼カメラによる画像から室内の位置と方位を検出する動作を実現し論文発表も行っている.さらに,指向特性の異なる複数のBLEを組み合わせた位置測位も併用し,照明器具が近くにない場合の補完方法も確認した.最後に,3) 検出からデータ送信・表示までの一連の動作と現場に向けた情報送信に関する確認を行った.ここでは,基幹病院を想定したネットワーク上のGISサーバに患者情報が転送され,位置情報を利用して地図上に表示されることを確認した.また,今回新たに現場に向けた情報送信機能の改善を計画しており,平成28年度6月を目途に,このフィードバック機能の開発を進めている. 以上をまとめると,振動による位置測位部分は基本的に計測が困難な分野であるが,計測精度とデータ容量を増加させることにより大まかな位置を検出することができた.一方,その他の計測装置やバイタル計測はWeb-GISと組み合わせることにより基幹病院側の情報収集能力が高まったことから,逆に現場に対する情報送信の要望が出てきた.これは,実際に装置を実現したことによる波及効果であり,またネットワークソフトの追加により実現可能な範囲であることから「当初の計画以上に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度および27年度で得られた実験結果と改良手法を総合的に組み合わせ,全体のまとめを行う.具体的には,「進捗状況」の欄で述べた災害現場における被災者情報(バイタルサイン)の自動取得,複数の検出要素を用いた屋内外測位手法の評価,および検出からデータ送信・表示までの一連の動作と現場に向けた情報送信の確認である.それらをもとに今後の応用面に関し考察する. 本研究は,最終的に救命救急支援基盤としての実用化を目指すことから,企業・大学・病院との連携は不可欠であり,すでに実績を基にしたそれら施設との協力体制は整っている.そのため,大学での技術開発を通じたシステムの試作と評価を実現し,システム具体化のための提案を行なう.ここで,緊急災害への対応以外に,平常時の健康管理,視覚代行を中心とした障碍者支援およびリハビリ支援も並行して進めることにより,システム自体の実用性と信頼性の確認が可能である.
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Causes of Carryover |
研究を進める過程において,BLE計測に関する新たな知見が得られた.そのため,学会発表を行うことが適切と考え,平成28年3月に開催された電子情報通信学会研究会において発表するための旅費が必要となった.当初,計画通りの年度予算執行を行っていたため,予算が不足したため,次年度予算を使用する必要が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会発表を行うための旅費として計画し,平成28年3月に筑波技術大学にて開催された電子情報通信学会福祉工学研究会において,BLEビーコンの指向特性改善に関する発表を行った.
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Research Products
(8 results)