2014 Fiscal Year Research-status Report
橋梁の維持管理に向けた超全視野三次元変形,ひずみ計測システムの開発
Project/Area Number |
26630211
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
宮下 剛 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432099)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 写真測量 / 橋梁 / 維持管理 / 変形 / ひずみ / 全視野 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,橋梁の維持管理に向けて,構造物全体の三次元挙動(変形,ひずみ)の計測を可能とする,非接触‘超’全視野計測システムの開発を目的とする.これを実現するために,従来の全視野計測システムとは異なり,カメラの設置位置に任意性を持たせる.研究のチャレンジ性は,遠く離れた地点にカメラを配置することから,主として,カメラキャリブレーション手法の開発,カメラの同期計測方法の確立にある.本研究の成果によって,土木構造物のミクロ領域からマクロ領域までの三次元変形,ひずみ分布の計測が可能となる.さらに,ハイスピードカメラを用いることで,高速な動的現象の計測も可能となる.適用範囲も建築,航空,造船,機械,電子分野など多岐にわたり,工学分野への貢献は卓越したものとなる. 今年度は,計測システムのコア部分となる,カメラキャリブレーション手法の構築を屋内試験による検証を通じて進めた.これについては,市販のソフトウェアもあるが,カスタマイズ性を重視し,ブラックボックス化を避けるために,これまでに研究代表者が進めた,レーザー振動計を用いた三次元振動計測システムの研究も参考にしながら,プログラムをコーディングした.具体的には,通常のステレオ写真測量と同様に,計測対象との距離を比較的近い状態にして,カメラキャリブレーション手法の構築を進め,二台のカメラで,三次元座標が既知である物体を撮影し,外部パラメータと内部パラメータを同定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,計測システムのコア部分となる,カメラキャリブレーション手法を構築したことから,研究はおおむね順調に進展しているものと判断する.ステレオ写真測量では,まず,ユーザーが対象空間に三次元全体座標系を設定し,その中に配置したカメラの位置と姿勢(回転)をあわせた六自由度を既知の座標値から同定する(外部キャリブレーション).同時に,三次元座標とカメラ画素平面の写像関係を表現するカメラモデルに含まれるパラメータも同定する(内部キャリブレーション).これらの作業を各カメラについて行う.手法自体は古くからあり,近年はロボットの自動走行などコンピュータビジョンの発達で洗練が進む.しかし,システム化を通じてブラックボックス化も進む.本研究では,広範囲の任意の場所にカメラの設置を許す.カスタマイズ性という観点から,カメラキャリブレーション手法のプログラムを作成する必要があった.作成したプログラムの妥当性を屋内の近距離計測で実施したところ,1mm程度の精度が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,屋内で鋼板の一軸引張試験や鋼部材の座屈試験に構築した計測システムを適用するとともに,屋外での検証を実施する.ここでは,橋梁全体を広範囲に撮影することを考えると,二台のカメラ間距離は数百mから数kmに達する.このため,カメラの同期計測手法,カメラキャリブレーションで必要となる既知点の設定方法,計測距離と計測精度の関係などが課題となる. 河川を跨いで橋梁全体を撮影するような場合に,ステレオ写真測量を行うためには,二台のカメラのシャッターを同じタイミングで切る必要がある.これに向けては,市販のGPSモジュールから出力されるパルス信号を共通信号として各カメラで記録する,あるいはパルス信号をタイミング信号としてシャッターを切るなどの検討を進める.あわせて,計測精度と光量の関係性把握,カメラの高速連写機能を利用した動的計測に向けた検討も行う.また,カメラキャリブレーションで必要となる既知点の設定方法については,近距離のキャリブレーションでは,円形のドットを記した平板などを用いる手法が確立されているが,長距離の場合には確立された手法がない.図面をもとに構造上の特徴点にLEDライトを設置するなど,既知点の設定方法を検討する. 上記の検討を通じて,橋梁全体の三次元挙動(変形,ひずみ)を計測することが可能な‘超’全視野計測システムをまとめ上げる.
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