2014 Fiscal Year Research-status Report
都市内における渋滞の時空間過程の抽出とその可視化の手法開発
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26630233
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60401303)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 渋滞 / 時空間過程 / データマイニング / 感知器データ |
Outline of Annual Research Achievements |
都市では日常的にほぼ同地域に渋滞が発生するが,その発生地点や時点,渋滞長などで表現される形態は日々異なっている.交通管理者や利用者は,多発する渋滞形態を経験的には認識しているものの,いかなる条件の差異が発現する渋滞形態の違いを産むのかを定量的に把握することは難しい.本研究は,渋滞形態把握を目指す一つのアプローチとして,長期に渉り観測されてきた感知器データに対するマイニングを通して,渋滞形態の類型化を試行する.この解析を通し,分析対象都市に特有の渋滞形態の把握や,曜日・気象などの条件に対応した典型的な渋滞形態の抽出を行う. 本年度は,まず,曜日や気象など交通に影響を与える要因を考慮して,感知器で観測された平均速度・交通量から,渋滞発生判定を行う方法を検討した.渋滞情報提供では,平均速度に対して設定した全リンク共通の閾値を用いて渋滞発生判定をしているが,本研究では,各リンクの長期間観測データを用いて,曜日による車両種別や運転者の違い,天候による運転挙動の違いなどを反映した渋滞判定を行った.上記の検討によって,渋滞リンクおよび渋滞時間帯を記録した渋滞履歴情報を作成した. 次に,作成した渋滞履歴情報を使用し,頻出パターンマイニングを拡張した分析方法を用いて,同時にある一定の頻度以上で渋滞が発生する地域を抽出した.沖縄本島の感知器データを用いた分析では,朝ラッシュ時には那覇市東部で広範囲に同時に渋滞が発生するが,その渋滞は那覇市西部には影響を及ぼさず,東部と西部で独立に渋滞が発生していることが確認された. 以上の分析を通して,提案手法により渋滞形態について新たな情報を得ることができる可能性について示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の当初計画では,日本道路交通情報センターが整備している「渋滞統計」に記録された渋滞リンク・渋滞時間帯情報に対して本研究の提案手法を適用し,その適用可能性を評価・検証する予定であった.しかし,渋滞統計では,毎年,一部の渋滞観測リンクの端点座標が更新され,その更新履歴を辿ることが難しいことが判明し,半年以上のデータを用いた分析に支障が生じることが明らかになった.そのため,本年度途中で,警察が所有する,VICSリンク毎に平均速度・交通量が記録された感知器データを用いた分析を行うよう研究計画を変更した.新たなデータを用いると,約2年半に渉る交通観測結果に基づく分析が可能である.しかし,本研究の提案手法で分析を行うには,入力データとなる渋滞リンク・渋滞時間帯情報を感知器データから作成する必要が生じるため,そのデータ作成手法についても検討を行った. 以上の研究計画の変更が生じたため,当初計画より多少遅れが生じており,本年度中の成果報告は行えなかった.しかし,感知器データから分析に使用するデータの作成方法については検討が終わり,当初予定の前半の分析については完了し,2015年6月に学会で成果報告を行う予定である.また,既に後半の分析にも着手しており,来年度は当初計画に沿った成果を出すことができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,頻出パターンマイニングで抽出された一連の渋滞が発生する地域内のリンクに着目し,系列パターンマイニングによる分析を通して,あるリンクで発生した渋滞が,周辺のリンクに影響を与えて拡大し,最終的に渋滞が縮小,解消に至る時空間過程の抽出を行う.この分析を通して,曜日や気象など様々な条件下における典型的な渋滞形態の把握をを目指す. また,分析から得られた渋滞地域・時空間過程の情報の理解を促進するため,結果を視覚的に表現する手法について検討を行う.
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Causes of Carryover |
研究の進行に遅れが生じたため,成果発表に要する費用が予定よりも少なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は,当初計画の段階まで進める予定であるので,本年度の残額は,成果発表のための旅費・その他(英文校正)に充てる計画である.
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