2015 Fiscal Year Research-status Report
シントロフィーを促進するサポーター微生物の存在とその新規微生物間相互作用の解明
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26630250
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (20421844)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微生物ゲノム / メタン生成アーキア / 嫌気共生細菌 / シントロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、シントロフィーを形成する嫌気性共生細菌とメタン生成アーキアのゲノム解析を実施した。嫌気性共生細菌では、酪酸やその他の脂肪酸を分解することが知られているSyntrophomonadaceae科のSyntrophomonas wolfei subsp. wolfei、Syntrophomonas wolfei subsp. methylbutyratica、Syntrophothermus lipocalidusの3株の比較ゲノム解析を実施し、有機物分解を担う代謝経路と、その有機物分解を可能にするエネルギー保存や水素・ギ酸生成に関与する酵素遺伝子群を特定した。また、メタン生成アーキアでは、Methanomicrobiaceae科に属し水素やギ酸を利用してメタンを生成するMethanoculleus horonobensis 、Methanoculleus thermophilus、Methanofollis ethanolicusのゲノム塩基配列をシークエンシングした。さらに、シントロフィーによる有機物分解系のモデルである嫌気消化汚泥を構成する微生物の多様性を、MiSeqシークエンサーを用いた16S rRNA遺伝子アンプリコン解析により解明した。その結果、Deltaproteobacteria綱に属するSyntrophaceae科などの嫌気共生細菌の一群、Methanoculleus属等の水素利用メタン生成アーキアが検出され、消化タンク内でシントロフィーによる有機物分解とメタン生成を担っていることが示された。また、それ以外の微生物群として、Bacteroidetes、Chloroflexi、Spirochaetes、Synergistetes、Thermotogae、“Ca. Cloacimonetes” (WWE1グループ)、“Ca. Marinimicrobia” (SAR406グループ)、“Ca. Aminicenantes” (OP8グループ)等が高頻度で存在することが明らかとなり、これらの微生物群がシントロフィーによる有機物分解を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ合衆国イリノイ大学の研究協力者と連携して、嫌気環境においてシントロフィーによる有機物分解を担う嫌気共生細菌とメタン生成アーキアの生理・生化学的特徴を詳細に把握するための比較ゲノム解析を推し進めることができた。さらに、これらの微生物が実際の嫌気環境においてどのような促進作用を受けているかを解明するために基盤情報として、嫌気消化プロセスから採取した汚泥試料に含まれる微生物群の多様性を解析し、嫌気共生細菌とメタン生成アーキアの存在を確認するとともに、サポーター微生物群の候補となる機能未知微生物群の系統学的位置情報を獲得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、メタン生成アーキアの比較ゲノム解析を実施し、嫌気共生細菌のゲノム情報と合わせてシントロフィーの形成にとって重要な遺伝子機能情報を明らかにすることを試みる。また、消化汚泥試料のメタゲノム解析を実施し、促進作用を有すると推定される微生物群の生理・生態学的機能を解明する。さらに、嫌気共生細菌とメタン生成アーキアの2者培養物に対し、促進作用があると期待される物質や、促進作用を有すると考えられる微生物を添加し、有機物分解とメタン生成が促進されるかどうかを解析する。嫌気共生細菌やメタン生成アーキアの培養とゲノム・メタゲノムなどのオミクス解析は、引き続き産業技術総合研究所、イリノイ大学等の研究協力者の助力を得ながら実施する。
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Causes of Carryover |
嫌気共生細菌とメタン生成アーキアの比較ゲノム解析のためのプラットフォーム構築、特に使用する遺伝子解析ソフトウェア等の最適化と、シントロフィーによる有機物分解において重要な機能遺伝子の特定に時間を要したため、実環境でのこれらの機能遺伝子の分布を解析するためのメタゲノム解析の外注分析の発注に至らなかったため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、シントロフィーによる有機物分解系のモデルとして消化汚泥のメタゲノム解析の実施を予定しており、その外注分析費用に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)