2014 Fiscal Year Research-status Report
低層鉄骨造建築物を対象としたDIY制振補強構法の開発
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26630258
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
曽田 五月也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70134351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮津 裕次 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70547091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DIY工法 / 低層鉄骨造建物 / 靱性型設計 / 接着剤接合 / 制振補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、靭性保証型として設計・施工されている数多くの既存低層鉄骨造建築物が極大地震時に過度な損傷を蒙ることの無いよう、小型のダンパを所有者自ら建物に取り付けることで耐震性能を向上させることを可能にするDIY式の制振補強構法を実用化することを目的としている。既存の建築物が対象であるので、建築計画に対して支障となることを避けるために、ダンパは骨組みの柱梁接合部近くに方杖状に設置することを基本とする。本研究では、設計方法と施工技術の両者ともにDIY化を目指すこととして、特にダンパの取り付け方法に関しては入念な実験を実施する事で、基準法に整合する機械式の接合方法ばかりでなく、接着剤による接合方法を一般化することも視野に入れている。本工法を普及することで想定されている極大地震動の到来に備えて速やかに地震防災体制の大幅改善を実現することを目指している。 平成26年度の研究実施目標として、(1)標準的な部材断面および各部の納まりの調査を行うことと、(2)DIY施工の方法を開発することの2点を掲げた。(1)に関しては、非専門業者でも工事を適用することがが可能な範囲の建物として低層の重量鉄骨造および軽量鉄骨造の両者の平均的な構造の実態を調査した。一般の建築物では内外装各種仕上げが施されているため、素人には手に負えないと判断されるものも多いが、中層の事務所兼用住宅などでは1階をピロティとし車庫に利用するものも多く、そのような実建物2棟については実際のDIY式の設置工事を試み、さらに、設置前後の建物の振動性状の比較を試みた。また、5階建てラーメン形式の共同住宅(工業化住宅)についても同様の施工実績と効果の検証とを行った。これらの実施工事においては、補強部材を主体構造に接着剤で取り付ける事を行い、工事は非専門業者では無くとも容易に実施できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を始めるに当たり、多くの低層鉄骨造建築物で使用される標準的な部材断面および各部の納まりの調査を行った結果、使用される部材断面には比較的限られており、限られた範囲の工事方法によりダンパの設置が可能であることが分かった。また、接合方法としては、基準法に整合する機械式の接合法も可能ではあるが、DIYにより適した簡易な工法としては、接着剤による接合を実用化出来れば極めて有効なことが明らかになった。実際の中層事務所兼用住宅を対象とするDIY施工の実施を通じて、接着剤を用いた接合部の工事は容易に行えることを確認するとともに、設置前後の建物の振動性状の比較より、想定通りの効果が得られることも確認できた。5階建てラーメン形式の共同住宅(工業化住宅)についても同様な施工と効果の検証実験とを行った。これらの実験を通じて、接着剤による取り付け工事は非専門業者では無くとも容易に実施できることを確認する事が出来た。予算の関係で、必ずしも十分な数の制振部材を設置できなかったために、高価はやや低めではあったものの、解析結果との整合性は良好で、提案する工法が将来的に有効であることを確認できた。事前の予備実験により接着剤による接合は十分な強度を有するものの、その品質管理のためには接着工法の仕様を定めるとともに超音波等による内部探傷を採用するためのマニュアル作りなどが課題であることも明らかになった。(591字)
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Strategy for Future Research Activity |
幾つかの実建物を対象とする施工実験により、補強部材を主体構造に接着剤により取り付ける事によっても、機械式接合法と何ら異なることの無い効果を期待できる事、また、非専門業者では無くとも容易に施工できることを確認する事が出来た。事前に実施した素材試験によれば、接着剤接合は十分な強度を有することを明らかにすることが出来たものの、一般的には接着剤による接合に対する信頼性は低いのが実情である。そこで、それに対応するために、接着工法の仕様を詳細に定めるとともに接着部の品質管理につき、超音波等による内部探傷を採用するためのマニュアル作りなどが行う事とする。また、上記の通り、柱梁接合部に方杖状に設置する方式では際立った効果を生むのが難しいために、ダンパの変形増幅機構を併用するダンパ設置法の開発も行う事として、トグル機構を併用したオイルダンパや仕口ダンパの設置方法の検討を始めている。
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Causes of Carryover |
研究の区切りがついたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の実験用消耗品費として使用する
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