2014 Fiscal Year Research-status Report
東北被災地の生活圏再編と環境移行を支えるコミュニティカフェのアクションリサーチ
Project/Area Number |
26630268
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森 傑 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80333631)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コミュニティカフェ / 環境移行 / 生活圏 / アクションリサーチ / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災における各種の復興関連事業により、被災地の社会的・経済的・空間的な構造は大きく変容していく。過酷な環境移行による被災者の精神的・身体的負担を和らげるべく、新たなコミュニティの拠り所となるべき場所を涵養することは、被災地が求めている喫緊の支援課題であり、被災者の生活の質の向上を第一とする建築計画学が担うべき学術的使命である。本研究は、A.東日本大震災以前の災害にみるコミュニティカフェ類施設の歴史的再考、B.東北被災地におけるコミュニティカフェの俯瞰的・体系的整理と比較分析を踏まえ、C.再編拠点を目指すコミュニティカフェのアクションリサーチと設計方法の実地検証を通じて、災害後に再構築される地域社会の礎となるコミュニティカフェの計画手法とその理論の萌芽的知見を得ることを目指す。 2年間の実施計画として、以下の3段階で研究を遂行する。平成26年度は主として(1)および(2)に取り組んだ。 (1)東日本大震災以前の災害におけるコミュニティカフェに類する施設等の成立の実態と過程について総合的に評価・分析し、歴史的にレビューを行う。(2)東北被災地のコミュニティカフェについて、成立経緯や成果・課題、現状の被災者の生活との関係、地域再編の中での位置づけについて詳細な情報収集を行い、各事例の特徴を比較分析しながら、俯瞰的・体系的な整理を行う。(3) (1)(2)を踏まえ、大船渡市末崎地区での地域再編拠点を目指している「居場所ハウス」のアクションリサーチを通じて、その建築設計方法の効果や課題を経年的に検証し、災害後に再構築される地域社会の礎となるコミュニティカフェの計画手法とその理論の萌芽的知見を得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)東日本大震災以前の災害にみるコミュニティカフェ類施設の歴史的再考 近年の大災害(阪神・淡路大震災や新潟県中越沖地震など)において、被災者や支援者により自発的につくられたコミュニティカフェに類する集会機能施設について、メディア記録や学術的資料の蓄積が多い事例を取り上げ、当時の社会背景・歴史的文脈と照らし合わせながら、特に施設の計画手法と運営手法に注目して整理を行った。また、被災地型コミュニティカフェの特性についての仮説を立てるべく、高齢化が進むニュータウン等にみられる事例(千里ニュータウンの「ひがしまち街角広場」など)について、活動がどのように企画・実現され維持されてきたのか、どのように改善されてきたのかについての情報収集を実施した。 (2)東北被災地におけるコミュニティカフェの俯瞰的・体系的整理と比較分析 震災を機に岩手県・宮城県・福島県でうまれたコミュニティカフェについて、それらの成立経緯と利用実態について情報の収集を行った。また、各事例への実地調査およびヒアリング調査を実施し、現状の被災者の生活との関係の中での意義と課題、地域再編の中での位置づけについて整理を行った。加えて、当該地域の被害状況、災害公営住宅や防災集団移転の戸数・規模、移転前と移転先の地理的関係、既存地区の分割や統合などの事業計画単位などの復旧・復興の動向を把握し、共通する傾向やパターンあるいは差異を把握した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度の成果を踏まえ、(3)のアクションリサーチを中心に、パイロット的事例としての「居場所ハウス」の成果と課題を位置づけ、生活圏再編と環境移行を支えるコミュニティカフェの計画手法へ向けての総合的な考察を行う。 (3)再編拠点を目指すコミュニティカフェのアクションリサーチと設計方法の実地検証/「居場所ハウス」のコンセプトは、イ)新しい地域構造へと向かう復興活動を結びつけるノード(立地と配置)、ロ)気仙大工の技法を活かした建て方とそのプロセス(職人と技術)、ハ)利用者の能動的な使いこなしを引き出すアフォーダンス(空間と設え)、である。「居場所ハウス」の計画・設計方法の効果と課題について、以下の①②を通じて検証し、災害後に再構築される地域社会の礎となるコミュニティカフェの計画手法とその理論の萌芽的知見を得る。 ①「居場所ハウス」計画プロセスの内省的レビュー/プロジェクト関係者を対象として、震災後の末崎地区被災者の生活変化やニーズ、「居場所ハウス」プロジェクト立案までの経緯、計画・設計の合意形成や意志決定で直面した課題とその解決への工夫、現状の成果と被災者の生活との関係などについて、当事者の一人である研究代表者との対話型ヒアリングを通じてレビューを行い、「居場所ハウス」を取り巻く諸課題を客観的かつ内省的に整理する。 ②「居場所ハウス」利用実態の経年追跡調査/「居場所ハウス」オープン後からの追跡的な利用実態調査を実施する。具体的には、誰が・いつ・どのような目的で訪れ、どこで・どのように滞在し、その環境をどのように評価し、「居場所ハウス」の存在が被災後の生活の中にどのように位置づけられているのかについて、「居場所ハウス」内での滞在行動調査および利用者への聞き取り型アンケート調査を実施する。
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Research Products
(2 results)