2014 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・クライシスの住宅供給システムに関する国際比較分析
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26630273
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポスト・クライシス / 住宅政策 / 住宅供給 / 住宅市場 / 住宅ローン市場 / 社会住宅 / 経路依存 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「ポスト・クライシスの住宅供給システム」が「経路依存性」と「グローバル・インパクト」の組み合わせから形成される、という仮説を立て、それに沿って、欧米・東アジア諸国の比較分析を進め、(1)プレ・クライシスの住宅供給システム、(2)クライシス・インパクト、(3)ポスト・クライシスの住宅供給システムの内容を解明しようとした。この立論に沿って、文献・資料を系統的に収集し、読み込む作業を進め、また、香港、スロベニアでは、海外の多数の研究者とアイデア・情報を交換することができた。 以上の結果、(1)アングロ・サクソン諸国では、金融危機の影響が深刻であったにもかかわらず、持ち家市場はすでに回復していること、(2)ただし、ニューヨーク、ロンドンなどの住宅市場が空前のブームに沸く一方、地方圏の住宅・住宅ローン市場は依然として停滞したままで、地域差が拡大していること、(3)フランスなどのヨーロッパ諸国では、ポスト・クライシス期になって、社会住宅建設の再開がみられ、持ち家供給に傾いていた政策からテニュア・バランスを重視した政策への移行が認められること、また、金融危機の影響がとくに深刻であった地中海沿岸諸国では、伝統的に持ち家重視のシステムが展開していたのに対し、社会住宅・家賃補助などの施策が(小規模ではあるが)はじまったこと、(4)東アジア諸国では、金融危機の影響は比較的小規模であったが、持ち家価格の高騰から、若年層の住宅購入が困難となり、公共住宅の大量建設がはじまったこと、などの諸点が明らかとなった。以上のような住宅供給システムの変化は、各国の経路に依存すると同時に、グルーバルな金融危機の影響を反映し、本研究の仮説を、少なくともある程度は、支持しているとみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した本研究の仮説に沿って、Housing Studies, Urban Studies, The Journal of Housing and the Buil Environment, The International Journal of Urban and RegionalResearch などの主要ジャーナルの文献を系統的に調べ、理論展開の動向と各国の実態をおさえることができ、また、香港、スロベニアでは、アングロサクソン諸国、ヨーロッパ諸国、中国・韓国・香港の研究者とのアイデア・情報交換のためにまとまった時間をもつことができ、最新の情報・資料を入手することができた。さらに、理論検討の背景把握として、Economist, OECDの各種レポートなどから、各国の住宅市場の推移を調べることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は順調であったが、まだ多くの「穴」があることから、それを埋めるために、文献・資料の収集と読み込みを引き続き行う。さらに、海外での調査を実施することを考えており、イギリス(ブリストル大学)、オランダ(アムステルダム大学)を拠点とすることを検討している。 さらに、これまでの研究成果と次年度以降の研究計画をふまえ、2冊の英語著作の執筆を計画している(Ray Forrestとの共著、Misa Izuharaとの共著)。出版社との契約はすでに終えた。この著作の執筆達成に必要な文献・資料収集を行う予定である。出版計画をもつことで、研究を具体的に進捗させることが可能になる。
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Causes of Carryover |
円安の影響により、洋書の高騰が著しく、次年度発行予定の図書を買えなくなるのではないかと心配になり、少額ではあるが、次年度に繰り越した。また、海外調査のコストも急速に増大する可能性がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度から繰り越す研究費は、上記のように、次年度発行予定の図書の購入にあてる予定である。また、円安のために、海外調査のコストも増大すると考えられ、本年度からの繰り越し金で調査費を補充する。
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