2015 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な都市・地域デザインにおけるコモンズの導入条件とその方法に関する研究
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26630274
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
槻橋 修 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50322037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 寿一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20191265)
小池 淳司 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60262747)
井料 隆雅 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10362758)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 震災復興 / ローカルコモンズ / 復元模型 / ワークショップ / 土地の記憶 / 地域社会の持続可能性 / 震災アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近年環境学、経済学、政治学、法学、社会学などの領域で盛んに研究が行われる様になったローカルコモンズの概念を、建築学・市民工学の実践的計画学に導入し、公/民のみならず多様な主体が重層的に地域空間を維持・更新していくことのできるような都市・地域デザインの成立条件とその方法論について明らかにすることを目的とする。 東日本大震災の被災地の復興過程、特に岩手県大槌町における中心市街地(町方地区、安渡地区)におけるローカルコモンズを街の復元模型を用いた町民参加のワークショップを通して得た記憶の中から顕在化させることを主軸とし、復興過程の中で新しい地域空間再生手法のモデル構築を行う。 2015年度は大槌町中心市街地である町方地区に隣接する安渡地区における復元模型ワークショップを行うとともに、その地域で活発に行われていた地域の伝統芸能の復興過程などを主題としたシンポジウムを大槌町で開催した。 また既に大槌町町方地区において開催したワークショップで収集済みであった街の記憶に関しては、これまでの型上への記憶証言(つぶやき・旗)のプロットに加えてワークショップ中に参加者から要望を受けて追加制作する景観要素を「作り込み」として位置付け新たに分類 方法を考案して追加情報とした。また「作り込み」情報と記憶証言(つぶやき・旗)の相関関係の多面的な分析を通して地域のローカルコモンズの顕在化手法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2年目となる2015年度は、現地での模型ワークショップやシンポジウムを通じた情報収集については、順調に進めることができた。とくに現地でのシンポジウムについては、地域に伝承されている伝統芸能などの無形文化をコモンズとして位置づけるための検討を進めることができた。 しかし、模型ワークショップの実施自体が時間をとることに加え、集まった膨大な証言を研究成果としてまとめる十分な時間を確保できなかったこと、そして、復興事業も集中復興期間の最終5年目を迎える中で、街の復興が実感できるまで実態が変わっていないことから、地域の文化的共有資源としてのローカルコモンズをどのように地域に実装していくかという手法についてはさらなる検討が必要であると思われた。そうした問題も考慮しながら、現地の復興状況や住民の関心時に合わせて、研究方法を逐次修正していく必要性も感じてきた。 地域社会における文化的共有資源に対する住民の関心は、防潮堤建設や区画整理事業という目前の大事業を前にして、どうしても後回しになってしまう状況がある。ローカルコモンズを評価する指標を提示することにより、地域コミュニティの再生、地域経済モデル、サステイナブル・デザインによる地域空間というテーマについて、復興事業を終えた後の地域の将来像とも関連が深い。 以上、総じて、2年目の研究では、初年度からの継続的活動を計画通りに実施することはできたものの、現地の状況が変化してきている中で、すべてを実施し具体的な成果物としてまとめるところで課題が残ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、研究の最終年度ということもあり、2014年(神戸)、2015年(大槌)に開催したローカルコモンズに関するシンポジウムから得られたとコモンズ論と被災地域のローカルコモンズに関する情報や知見を総合し、地域に伝えていくための方法論についてモデル化作業に取り組む。調査報告書や論文等、これまで蓄積してきた情報や知見を具体的な研究成果としてまとめる作業により重点を置く一方、ローカルコモンズの現地での実装方法に関しては復元模型の展示会とあわせて地域でのアンケート調査などを行う計画を立てている。その上で、震災伝承と文化復興をつなぐメディアコモンズ構想と街の自然や文化の共有資源化を図り、地域社会の持続可能性モデルを具体的に提案することを目標に、計画的に研究を進めていく。 研究会の開催(2か月に1回程度):ローカルコモンズを維持・更新していく上での現地メンバーとの研究会を開催し、多世代への効果的な実装方法の検討をはじめ、継続的なモニタリングを行う。 シンポジウム開催(年間1回、準備1回):コモンズ分野での専門家を現地に招き、ローカルコモンズの導入による地域デザインのモデル評価をテーマにしたシンポジウムを開催する。その結果を報告書としてまとめ、発行する。 評価報告書の執筆・作成:ローカルコモンズを導入した地域デザインのモデル評価、研究機関において新たに発見された知見等をまとめ、評価報告書として発行する。
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Causes of Carryover |
2015年に配布予定であった住民アンケートの印刷費として予定していたが、アンケート調査項目の見直しが必要になったため、次年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査項目を見直して本年アンケート調査を行う予定である。
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