2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造中の原子局所環境を選択的に評価する分光的小角散乱法の実現
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26630294
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 浩司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50214060)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | LPSO / XAFS / SWAXS / MgYZn |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度MgYZn合金の安定構造にいたっている段階でのXAFSパターン自体が従来の電子顕微鏡などの手法で報告されている構造から直接導けない、などの出発点での問題が明らかになったため、今年度はまずほぼ安定な18RLPSO構造であるMg85Y9Zn6組成の結晶長時間熱処理材を用い、そのXAFSパターンについてフィッティングによって電子顕微鏡などの従来の構造報告との矛盾のない結論が得られるかと言う検証をおこなった。 その結果、Zn,Yの周りのXAFSの解析結果がTEM-ABSなどによる構造と基本的に良い対応を示す解析結果が得られることが判明し、基盤データとして平衡(安定)18RXAFS信号についての知見がまとまった。 一方、本来DAFSが威力を発揮すると考えていたLPSO形成初期について、スピノーダル分解説を念頭に置いた解析のための試料の熱処理条件明確化を今年度進めていたところ、LPSO形成過程自体が従来提唱されていたスピノーダル分解的1次元周期構造形成とはことなる形成機構を持つことが判明し、今年度はまずその機構のナノ構造的特徴解明を進めるとともに、その機構において予想される局所構造に対するDAFS測定に必要な条件検討を進めた。具体的には一次元濃度波のDAFSと比較すると散乱強度が1桁小さくなることが予想されるため、DAFSの効率化の設計を先行させる必要があり、その検討を進めている。また、DAFSの解析の基礎データとなる透過XAFSについても、LPSO形成初期の試料特性(不均一厚薄膜試料、粉末化不可)と言う問題が新たに浮上し、現在信頼性のおけるXAFS測定のための試料加工方法についての検討を、小角高角散乱測定とXAFS測定を組にして進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計算、理論からの予測でDAFSによる検証に好適であると予測されたMgYZn合金におけるLPSO形成過程が,われわれの実験(散乱)により、異なる機構による相変態であることが明らかになったことは予測外の成果である。今回明らかにした機構による局所環境変化を解明することはさらに魅力的な研究対象となった。しかし、同時に本申請で当初予定していたDAFS測定の技術的難易度がさらに高まったことになり、本年度はその対応手法の検討と通常の透過XAFSによる試料条件の検討に費やされた。その意味で予定より進んだ部分(材料の相転移機構の本質的理解)と遅れている部分(試料処理手法の確定)が存在する。
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Strategy for Future Research Activity |
LPSOの形成過程初期の特徴的構造が認められる条件は小角高角同時散乱法(SWAXS)によって検証可能であることは示せたため、今後はXAFS/DAFSと小角高角散乱の測定をセットにして進めることにより、最終的に本申請で目指した構造相転移における局所環境構造の解明につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
小角高角の実験結果を受けてXAFS実験を計画したため、XAFSビームタイムを実際に取得する時期の関係で当初予定より1シフト少ないビームタイムしか確保できなかった(8万円)が、試料加工のための消耗品などでの出費(約4万円)が余分に必要となったため、差し引き4万円の繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の測定で明らかになった試料加工の課題を解決するための研磨試料加工のためのジグ類に使用する。
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Research Products
(6 results)