2014 Fiscal Year Research-status Report
極端紫外域における金属ナトリウムの光学特性の精密評価
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26630298
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
窪寺 昌一 宮崎大学, 工学部, 教授 (00264359)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 真空紫外分光 / レーザー生成プラズマ / 金属ナトリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,金属ナトリウム分光のための真空紫外・極端紫外標準光源の整備を行った.具体的にはナノ秒の赤外レーザーを希ガス中に集光照射することにより発生するレーザー生成プラズマからの真空紫外・極端紫外放射の最適化を試みた.レーザー生成プラズマからの放射スペクトルはプラズマ温度に依存しており,レーザー集光強度,希ガス種の選定等により制御可能である.今回は,まず気体容器に用いる窓材(フッ化マグネシウム)の透過限界波長115 nmよりも長波長側の真空紫外光を効率よく取り出すために,レーザー集光強度の最適化を行った.この際,希ガスはこの波長域で自己吸収の少ないアルゴンを選択した.フェムト秒レーザー生成プラズマからの放射についても測定を行ったが,分光光源としては発光強度が不足していることが判明した.高性能の時間分解計測を行わない限りフェムト秒レーザー生成プラズマは使用する必要はないと思われる. 分光の対象となる金属ナトリウムの供給方法としては,当初原子力機構の協力により特殊な設備を用いて酸化を防ぎながらナトリウム金属をフッ化マグネシウム窓ではさみ,金属膜を生成させることを予定していた.しかし,原子力機構におけるナトリウム供給方法の制限により,この生成方法と並行してレーザーでナトリウムをアブレーションし,その際に過渡的に生じるナトリウム蒸気を用いる供給方法を検討することになった.レーザーアブレーションされたナトリウム蒸気中のイオン価数等を制御することにより,高密度でかつ過渡的に中性ナトリウム原子を発生させることに挑戦する.2年目はこの過渡的なナトリウム原子供給方法と真空紫外プラズマ標準光源とを組み合わせることによりナトリウムの真空紫外分光計測を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザー生成プラズマを用いる真空紫外標準分光光源の開発については予定どおり順調に進んでいる.ナノ秒レーザーを用いるレーザー生成プラズマ分光光源の開発と並行してフェムト秒レーザー生成プラズマからの発光形態についても検討を加えた.さらに,特定の波長に限定されるが,アルゴンエキシマを利得媒質として用いる波長126 nmのフェムト秒レーザーの増幅器を開発し,これの光学利得特性等についても明らかにした.126 nmレーザーの場合はもとの波長が限定されているが,これを基本波長としてさらに短波長域まで非線形波長変換を行えることから極端紫外域におけるコヒーレント光源として利用できる可能性を有している. ナトリウムサンプルのハンドリング技術に関しては,日本原子力研究開発機構との打ち合わせにより,機構が有しているナトリウム膜作製技術に加えて,レーザーアブレーションによる過渡的なナトリウム蒸気発生方法を宮崎大学において第一義的に行うこととした.当初のナトリウム膜生成法では安定なナトリウム層について透過分光を行えるが,フッ化マグネシウム窓材の影響等を排除することは難しい.過渡的なレーザー生成ナトリウム蒸気法では,ナトリウム密度を空間的,時間的に過渡的に制御できる可能性を持つことから,パラメータ制御という点では優れている可能性をもつ.もちろん既に確立されたナトリウム膜生成法と比較して挑戦的な課題ではある.このナトリウムハンドリングに関してのみ当初計画から遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
すでに分光光源開発については順調に進んでいることから,今後はナトリウムサンプルの安定供給方法を確立することに力を注ぐ. 既述したようにナトリウムサンプルのハンドリング技術に関しては,日本原子力研究開発機構が優れた技術を有しているが,機構との打ち合わせにより,この作製方法に加えて新たなハンドリング方法を確立すべきとの結論に至った.このナトリウム膜作製技術に加えて,宮崎大学においてレーザーアブレーションによる過渡的なナトリウム蒸気発生方法を行うこととした.当初のナトリウム膜生成法では安定なナトリウム層について透過分光を行えるが,ナトリウム膜をサンドイッチするフッ化マグネシウム窓材の影響等を排除することは難しい.これに対して過渡的なレーザー生成ナトリウム蒸気法では,ナトリウム密度を空間的,時間的に過渡的に制御できる可能性を持つことから,パラメータ制御という点では優れている可能性をもつ.(空間的,時間的な計測方法について充分に準備を進める必要はある)この方法は既に確立されたナトリウム膜生成法と比較して挑戦的な課題ではあることから2年目の中心的な研究課題として進める予定にしている.この生成方法と並行して当初計画どおりナトリウムの真空紫外分光計測について進める.
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Causes of Carryover |
当初予定されていた,日本原子力研究開発機構によるナトリウムハンドリング技術に依存する必要がなくなったために旅費使用等について差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この差額分は新しいナトリウム作製方法の消耗品費等に充当する.
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Research Products
(3 results)