2014 Fiscal Year Research-status Report
格子・電荷変調に伴う磁気相転移の電界制御と機構解明
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26630303
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷山 智康 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (10302960)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁性 / スピンエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、反強磁性秩序と強磁性秩序が拮抗した磁性体に焦点を当て、これらの磁気秩序および磁気相転移を格子・電荷変調により制御するための物理機構を解明し、さらにはその電界制御の実証までを目的としている。 上記の目的を達成するために本研究では、この巨大格子変形効果を利用することでメタ磁性転移を誘導することを目論み、研究代表者が実績を有するMBE法によりGaドープFeRh/BaTiO3(001)ヘテロ構造を作製した。強誘電体BaTiO3は278K, 190K付近においてそれぞれtetragonal相からorthorhombic相、orthorhombic相からrhombohedral相への構造相転移を示し、それに伴い、界面において格子変形がGaドープFeRh薄膜に伝達され、GaドープFeRhにおいて磁気的な変調が生じることが期待される。そこでSQUID磁力計を用いて温度変化に伴う磁化の変化を調査した。その結果、BaTiO3の構造相転移温度において明瞭な磁化の変化が観測された。一方、GaドープFeRh薄膜の磁気抵抗は、tetragonal相からorthorhombic相への構造相転移温度においては連続的な変化を示すのに対して、orthorhombic相からrhombohedral相への構造相転移温度では不連続な変化を示した。以上の結果より、tetragonal相からorthorhombic相への構造相転移温度では強磁性状態のドープFeRhの磁気異方性が変調を受ける一方で、orthorhombic相からrhombohedral相への構造相転移温度では強磁性状態から反強磁性状態に磁気転移が誘起されることが示された。また、観測された磁気転移はorthorhombic相からrhombohedral相への構造相転移温度で顕著に発現する圧縮ひずみに起因するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度に計画していたFeRh系合金/強誘電体へテロ界面の形成と格子変形に伴う磁気相転移の検出に成功した。また、高品質な強誘電体BaTiO3薄膜をPLD法によりMgAl2O4基板上に成膜することにも成功しており、概ね当初計画を達成しているため。一方で、FeRh系合金と反強誘電体とのヘテロ構造化については、次年度以降の継続課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度に作成技術を確立したFeRh系合金/(反)強誘電体へテロ構造に対して、電界により誘起される界面格子変形を介したメタ磁性転移の可能性を検討する。具体的な素子構造としては、(反)強誘電体上に形成されたFeRh細線に電界印加用の電極を配置した構造を想定する。FeRh細線は電子線リソグラフィ法により作製することが可能である。また、電界の印加に伴うメタ磁性転移の誘起過程は、自作した磁気光学Kerr顕微鏡により直接観察する予定である。一方、FeRhの電気抵抗は反強磁性状態と強磁性状態とで40%程度変化することが知られていることから、万が一Kerr顕微鏡による検出が困難なときには、電界印加状態におけるFeRh細線の電気抵抗変化を検出する手法に速やかに移行する。さらに、FeRh/強誘電体接合界面に分極電荷が生じる電界配置を用いることで、格子及び電荷がFeRhの磁気秩序状態に及ぼす影響を分離計測する。以上の研究成果に基づいて、格子・電荷変調効果により発現する反強磁性-強磁性メタ磁性転移の物理機構を考察し、電界によりメタ磁性転移を制御する本手法の有効性と改善点を明確化することで当初の目的の達成を目指す。
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Causes of Carryover |
H26年度に計画していた反強誘電体薄膜の成長に関して当初予想していたよりも成膜条件をさらに精緻に制御する必要があることが分かった。そのため、予定よりも多くの試料を作製し、試料作製条件の最適化を実施する必要があり、一部をH27年度に継続して進める必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の未使用金とH27年度分として請求した研究費と合わせて活用することで、FeRh系合金/(反)強誘電体薄膜ヘテロ構造を作製し、電界により誘起されるメタ磁性転移を実証する。具体的には、FeRh系合金/(反)強誘電体薄膜ヘテロ構造試料作製用の材料、真空部品類、電界印加磁気光学検出のための光学部品、電子部品、その他消耗品を購入するための費用として活用する計画である。
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