2014 Fiscal Year Research-status Report
セラミックス多孔体と低表面エネルギー液体を組み合わせた新規複合材料の創製と評価
Project/Area Number |
26630307
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中島 章 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00302795)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複合材料 / 多孔体 / 液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に3次元網目状の微細な細孔構造を有するアルミナ多孔体を基材として用い、固体と液体のハイブリッド材料(SLBC)を作製してその特異な濡れ性を詳しく検討した。 AlCl3・6H2Oを出発原料とし、相分離現象を用いて3次元網目構造を有するアルミナの構造体を作製した。さらにこの構造体を熱水中で処理し、骨格構造表面に微小粗さを付与した。この構造体に、CVD法によるフッ素系アルキルシランの表面処理を行い、さらに各種の低表面エネルギー液体(フッ素系オイル、イオン液体)を真空含浸してSLBCを作製した。 作製したアルミナ構造体は、数μmの細孔が連続した網目構造を有していた。また熱水で処理した試料は、骨格構造の表面全体に針状の微小な粗さが付与されていた。熱水処理を施したアルミナを用いたSLBCは、含浸液体が支持体表面に濡れ広がりやすく、均一なオイル膜を生成して水滴の転落性が向上した。この二重粗さによる毛管力の増大により含浸液体の保持力も向上し、高い液滴除去性能が長時間維持された。また、イオン液体を含浸したSLBCも、液滴除去性能の維持性が高かった。さらに粒子画像流速計測法でSLBC表面を転落している水滴の内部の速度分布を解析したところ、SLBC上の水滴の転落には “すべり”成分の寄与が大きいことが明らかになった。これは、wetting ridge(水との界面に生じる含浸液体のキャピラリー)の存在により、水滴の回転運動が妨げられるためと考えられた。 またSLBCに外部から電界をかけるとSLBC上の水滴は電場方向に駆動し、印加電圧を大きくすると速度が増し、定常速度に達した。種々の検討からその挙動の発現には主にクーロン力が寄与している可能性が高いことが示唆された。移動速度の計測から見積もられた液滴の電荷量は、フッ素系炭化水素上の水滴の帯電量の報告値と概ねオーダーが一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、複数の方法で3次元ネットワーク構造の細孔を有するセラミックス多孔体を作製し、プロセス条件と細孔構造の関係把握を行うとともに、得られた多孔体に種々のオイルを含浸することでSLBCを作製し、構造・液体性能と動的撥水性の関係を把握することを計画していた。字数の関係で上記概要には記載していないが、分相を利用する方法の他に、テンプレート法でも多孔体を作製しており、細孔構造の特徴づけができている。これらの多孔体はアルミナだけでなく、シリカやジルコニアでも作製ができている。また分子構造や組成が異なるシランを用いて撥水処理を行い、含浸する液体も様々なものを試した結果、界面での拡張係数が異なる(固体表面上での液体の分布状態が異なる)SLBCも作製できた。さらに、一部であるがそれらの特徴づけまで検討が進んでいる。 これらはすべて26年度に検討を予定していた内容であり、現段階で計画に沿ってほぼすべて実施できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、SLBCを構成する多孔体構造と、液体の粘性や蒸気圧、表面エネルギーなどの特性が得られる材料の特性に及ぼす影響を明らかにするとともに、この新規複合材料の設計に関する基礎概念を構築して省エネルギー技術に繋げていくことにある。27年度は着雪着氷を効果的に防止し、流動抵抗を低減することができる複合材料をSLBCで作製するための検討に重点を置く。流動抵抗については我々が独自のノウハウを持つ、粒子画像流速計測法(PIV)を適用し、拘束を受けて移動している液体の内部流動を可視化することを考えている。管内の液体を直接PIVで検討するのは測定原理から困難であるため、2つのSLBCで挟み込んだ状態での水滴の移動を代替特性として検討する。また、構造や組成を最適化した部材を用いて、着雪着氷機能の検討を行い、外部電界を用いた積極的な帯電量の増大による水滴の転落促進や制御を実現する。なお着雪着氷の検討には、実績のある「模擬雪」(球状シリカ中空粒子と水との複合体)を実際の雪の代わりに用いて検討する。
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