2014 Fiscal Year Research-status Report
傾斜電荷分布による自己分極処理機能を持つ自律型圧電材料の創生
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26630309
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
和田 智志 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60240545)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 圧電材料 / 複合材料 / キュリー温度 / 内部電場 / 分極処理 / ソルボサーマル固化法 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、TCが100℃近傍と低いが高い圧電定数を持つ材料中に温度に無関係な正負の電荷を、傾斜分布させることで内部電場を導入し、それによりTC以上であっても、自律的に圧電特性が誘起・保持できる新機構を持つ圧電材料を開発することを目的に、研究を行った。 まず、チタン酸バリウム(BT)ナノ粒子(300nm)と酸化ニオブ(Nb2O5)粒子の混合粉を有機溶媒と分散剤を用いてスラリーにし、ドクターブレード法を用いてセラミックスシートを作製した。次にニオブ酸カリウム(KN)ナノ粒子(300nm)とNb2O5粒子の混合粉を有機溶媒と分散剤を用いてスラリーにし、同様にセラミックスシートを作製した。これらを複数枚積層・圧着し600℃での脱バイ後、エタノール溶媒中でカリウム源を加えソルボサーマル処理によりKN/BT層を上下でKN/KN層で挟み込んだ一体型多孔体セラミックス(相対密度:65~70%)の230℃以下での低温合成に成功した。 このような熱膨張係数の異なるに種類のセラミックスの複合構造を通常の電気炉を用いた焼結により作製した場合では1000℃以上の高温を必要とし、室温までの降温時で発生する熱歪みにより多数のクラックが発生し、試料は破壊される。また、これらの複合セラミックスを120℃以上の高温で高電場を印加する分極処理を検討した結果、多孔体の部分にシリコーンオイルを含浸させることで分極処理にも成功した。このような多孔体における分極処理技術の確立もまた世界初の技術である。その後、内部電場の導入を確認するため3層構造複合セラミックスにおいて分極処理の有無におけるTCの変化について誘電特性の温度依存性により検討した結果、2℃近いTCの変化を確認できた。このことから本研究のコンセプトの妥当性を証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は、TCが100℃近傍と低いが高い圧電定数を持つ材料中に温度に無関係な正負の電荷を傾斜分布させることで内部電場を導入し、それによりTC以上であっても自律的に圧電特性が誘起・保持できる新機構を持つ圧電材料を開発することを目的に研究を行った。このためには内部電場を導入できたかどうかが大きなポイントとなる。 計画ではp型、n型の半導体層を導入することで内部電場を導入する予定であったが、研究開始後3ヶ月で作製の困難が明らかとなった。そこで内部電場導入機構を大きく変更し、TCの低いチタン酸バリウム(BT、TC =130℃)層をTCの高いニオブ酸カリウム(KN、TC =430℃)層でサンドイッチのように上下で挟み込んだ3層複合構造を構築し、この試料全体を分極処理することで例えBTのTCである130℃以上になっても上下で挟み込んでいるKN層の残留電気分極により10kV/cm以上の内部電場を導入でき、その結果試料全体のTCの向上が可能となる機構を提案し、その構造実現のためソルボサーマル固化法という230℃以下で多孔質ではあるものの、3層以上の複合セラミックスを作製できる方法を新規に開発できた。 更に、多孔体圧電材料の分極処理を実現するために、開気孔部分に絶縁オイルを含浸させることでこれまで困難であった多孔体の分極処理方法を確立できた。更に、僅かではあるもののTCの向上を確認でき、目的とする内部電場の導入とそれによるTCの向上を確認することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は前年度の結果に基づき、ソルボサーマル固化法に外場である直流電場を印加しながらセラミックスを230℃以下の低温で作製する新規電場印加ソルボサーマル固化法を開発する。この方法の開発により、低温で直流電場印加下でセラミックスの合成が可能となり、その結果直流電場下では自発分極が電場方向に配列し、かつ通常の合成方法では導入できないほど大きく歪んだ結晶構造と通常よりも巨大な自発電気分極を持つ巨大な内部電場を有する新規圧電材料の開発が可能となる。 この結果、分極処理は必要なくなり、かつTC自体が通常よりも大きく歪んだ結晶構造と自発電気分極を持つことで大きく向上し、化学組成的には通常の圧電材料と同じでありながら、完全に異なる結晶構造を持つ新規圧電材料を作製できる。 このため、直流電場を印加しながらソルボサーマル反応を可能にする新規合成装置を開発する。その後この新規電場印加ソルボサーマル固化法を用いて目的とする巨大な内部電場を有する新規圧電材料の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
2015年度の学会で研究成果を発表するため。 また、研究の遅れにより、今年度も実験を行うことになり、その為に必要な物品を購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年EcerS14他各学会にて研究発表の予定。 また、本研究における実験に必要な物品を購入予定。
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