2014 Fiscal Year Research-status Report
ユビキタス元素を原料とするヘマタイトナノ粒子分散可視光応答型光触媒の開発
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26630321
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久冨木 志郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90321489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 可視光応答型光触媒 / ケイ酸鉄ガラス / ヘマタイト / 国際研究者交流 / ハンガリー / クロアチア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度は、最近新しく発見された可視光応答型光触媒効果を有する鉄を含むソーダライムシリケイトガラス(15Na2O・15CaO・(70-x)SiO2・xFe2O3ガラス, 以下xNCSFガラスと略す。)の周辺組成のガラスについて、光触媒効果と物性と構造の相関を、鉄メスバウアー分光法などの放射化学的手法を用いて明らかにすることを目的として研究を行った。 化学組成の探索において、まずxNCFSガラスに酸化アルミニウムを加えた系は可xNCSFガラスよりも高い可視光応答型光触媒効果を持つことが分かった。アルミニウムイオンを主成分とする、いわゆるアルミン酸塩ガラスは可視-赤外領域において高い光透過性を有することで知られている。今回新しく見出された系ではアルミニウムの高い光透過性が、触媒効果に影響したものと思われる。このガラスの熱処理では通常のヘマタイトに加え、内部磁場の大きいものやナノ構造を持つヘマタイトがメスバウアースペクトルから確認された。これらの構造と物性相関解明は今後の課題となる。さらに、ガラスの作成法を熔融法からゾルゲル法に変更してもケイ酸鉄ガラス(xFe2O3・(100-x)SiO2)が作成可能で、この試料も熱処理するとヘマタイトが析出、可視光応答型光触媒効果を示すことが分かった。熔融法で作成したxNCSFガラスは原料の混合物の融点を下げる目的でNa2CO3, CaCO3を添加する必要があったが、ゾルゲル法ではその必要がなく、Na+, Ca2+を含まないため光透過性も向上することから、触媒効果の高い試料を得ることに成功した。 上記のように新たな成分を添加する方法と合成法を変えるという二つの手法によって、従来のxNCSFガラスよりも高い可視光応答型光触媒効果を持つガラスの開発に成功した。これらの研究成果は国内外の学会において発表、学術論文の形で出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の概要より、組成探索と合成手法変更により、これまでに開発してきた鉄を含むソーダライムガラスよりも高い触媒能を有するガラスを開発することができた。加えてメスバウアー分光法を中心とする放射化学的手法を用いることで、可視光応答型光触媒効果の鍵となるヘマタイトは通常のものとは異なる構造を持つものが含まれることが明らかになった。可視光応答型光触媒効果を持つケイ酸鉄ガラスについて、研究計画を進めていく中でいくつかの重要な知見を得ることができた。以上の点から本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果の概要を踏まえた次の段階として、平成27年度はxNCFSガラスの作成に用いていた酸化鉄のバルク粉末でなく、粒径の小さいナノサイズの酸化鉄粉末の作成手法を新たに確立し、この粒子を新たにxNCFSガラスに分散することで、光触媒反応の反応面積増加を狙い高機能化を図る。ヘマタイトナノ粒子の合成には既に成功しているので今後、これをケイ酸塩ガラスに添加した試料を作成し、光触媒能向上させた試料について評価を行う予定である。
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Research Products
(14 results)