2014 Fiscal Year Research-status Report
半導体ナノ粒子によるエネルギー選択散乱効果の解明と高性能熱電材料の創製
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26630332
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
竹内 恒博 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293655)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゼーベック係数 / 熱電変換 / 熱電材料 / 縮退半導体 / 電子散乱 / バンドギャップ / 電子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,微視的観点から定量的に解析することで,エネルギー選択散乱効果の制御指針を確立し,確立した制御指針を利用して,安価,無害,かつ,高性能な革新的熱電材料の創製を目指している. エネルギー選択散乱効果は,半導体電気伝導理論を用いて『ショットキー障壁』で説明されることが多い.しかし,この考え方では,『微細電子構造の効果』と『エネルギー選択散乱効果』を分離して考えることが難しい.また,熱電素子には,n型とp型の熱電材料を組み合わせる必要があるが,ショットキー障壁による散乱効果を利用する場合には,n型でのみ有効に働くことが予想され,p型熱電材料の性能を向上させることができない.実際に,エネルギー選択散乱効果を定量的に解析した例がなく,結果として,エネルギー選択散乱効果は,実用的熱電材料の開発にほとんど利用されていない.上記の問題点を解決する革新的な手法として,本研究では.微細分散した半導体ナノによる散乱効果を用いることにした. 熱力学的安定状態として『①シリコンの固溶体と共存可能な高マンガンシリサイド(HMS相, MnSi1.75)』を利用した.液体急冷法を用いて,シリコンの固溶体が微細に分散したHMS相を作製した.また,比較のために,『②シリコンの固溶体を含まない単相のHMS相』および,『③MnSiを第2相として含有するHMS相』を作製した. 上記の①~③の試料に対してゼーベック係数の測定を行ったところ,いずれの試料においても液体急冷直後のリボン状試料において観測されるゼーベック係数が,通常法で作製した試料のゼーベック係数よりも10~20%程度大きいことを確認した.また,リボン状試料を焼結することでゼーベック係数の増大は書滅することも確認した.この結果は,粒界においてエネルギー選択散乱が生じていることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に実施する研究では,①シリコンナノ粒子が微細に分散した遷移金属シリサイドの作製,②第一原理計算と光電子分光を用いた電子構造評価と線型応答理論による物性予測,③シリコンナノ粒子が微細に分散した遷移金属シリサイドの精密物性測定(電気伝導度,ゼーベック係数,熱伝導度,ホール係数)を実施する計画であった. 実際にシリコンナノ粒子が微細に分散した高マンガンシリサイド(HMS相, MnSi1.75)を作製し,作製した試料に対して,2K~700Kの温度領域に亘り,精密に物性を測定した.また,数値シミュレーションを用いて,ゼーベック係数の温度依存性に関する考察を行った.すなわち,研究を予定通りに進めることができていると言える. シリコンナノ結晶によるエネルギー選択散乱効果が見られなかったことは問題であるが,一方で,粒界におけるエネルギー選択散乱効果を確認することができたことから,平成27年度に実施する研究では,この効果を用いて高性能化した熱電材料の創製を目指すことが可能になった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,平成26年度に実施した①シリコンナノ粒子が微細に分散した遷移金属シリサイドの作製,②第一原理計算と光電子分光を用いた電子構造評価と線型応答理論による物性予測,③シリコンナノ粒子が微細に分散した遷移金属シリサイドの精密物性測定(電気伝導度,ゼーベック係数,熱伝導度,ホール係数)を継続して実施するとともに,平成26年度に開発した高性能熱電材料を用いて熱電発電素子の試作およびその評価を行う. 液体急冷法を駆使することで,現状で,ZT>1.0を示すp型HMS相を創製することに成功している.また,n型試料についても,ZT>0.5を実現した.これらの試料にたいして,粒径制御によりエネルギー選択散乱効果を取り入れ,さらに高性能化を図る.また,作製した試料を用いて熱電発電素子を試作し,安価で環境に優しい熱電素子を創製する計画である.
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Research Products
(18 results)