2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26630333
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 弘志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20598586)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶 / 多孔体 / 光異性化 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、多孔性結晶を用いた異方的能動輸送の実現を目的とする。前年度は、基礎となる光応答性多孔性配位高分子(PCP)の設計、合成、基礎的な光応答性について研究を進め、期待する成果を収めることができた。一方、平成27年度は得られた結晶性多孔体の細孔構造と分子吸着および光異性化による吸着挙動の変化に関する研究を中心に進めた。その過程で、従来解明されていなかった、光異性化部位の極性変化と分子吸着の関係を明らかにすることに成功した。具体的な結果は以下の通り。 1.細孔壁に導入したアゾベンゼン部位の光異性化効率とそれに伴う極性変化を、極性に敏感に応答する色素分子を用いてスペクトル変化として捉えることに成功した。 2.光異性化に伴う分子吸着挙動の変化を二酸化炭素およびアルゴンを用いて検討したところ、二酸化炭素吸着では顕著な変化が見られたのに対し、無極性単原子分子であるアルゴンでは吸着量および吸着速度に顕著な変化は観測されなかった。 これら研究成果は、光異性化に伴う細孔サイズ・形状のみが注目されていたミクロ孔物質への分子吸着に対し、新たな観点を提供すると共に材料指針を与えるものである。 また、アゾベンゼンとは異なり、各異性体の熱安定性の高いことが知られるジアリールエテンを用いた光応答性結晶の合成も行い、固体中であってもほぼ定量的な異性化反応を示す結晶を得ることに成功した。溶液中では定量的な異性化効率を示すジアリールエテンであっても固体中では著しくその効率が低下することが常識であったが、結晶に柔軟性を付与することで高い異性化効率を実現することが可能となった。
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