2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ナノ粒子へのガス吸着を利用した蓄熱材料の原理実証
Project/Area Number |
26630342
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高村 仁 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30250715)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 蓄熱材料 / 水蒸気吸着 / 潜熱利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、酸化物ナノ粒子表面には多量の水蒸気が吸着するが、その吸着に際して40から120 kJ/molの熱(吸着熱)がやり取りされる。水蒸気の吸着現象は室温・常圧近傍で起こるため、単位体積・重量当りの水蒸気吸 着量を増加させることが可能であれば、通常は回収・有効利用が困難な室温近傍の低品位熱を利用し た新たな蓄熱デバイスへの応用が期待できる。そこで本研究では、セリウム酸化物(CeO2)や他の酸化物ナノ粒子の合成、比表面積の増大化、吸着熱測定を行い、ガス吸着を利用した蓄熱体の原理実証を行なうことを目的とする。 今年度はCeO2ナノ粒子の合成から開始した。CeO2ナノ粒子は紫外レーザー法を用いて作製され、XRD、BETを用いて粒径が算出された。水蒸気吸着特性と吸着熱はジーベルツ装置を用いた容量法により測定された。 また吸着熱はDSCによっても測定された。表面状態はラマン分光法により測定された。 作製された粉末状のCeO2ナノ粒子の粒径はXRDからは3.55 nm、BETからは8.97 nmと算出された。この相違はBETでは凝集体としての二次粒径が測定されるためである。容量法を用いた水蒸気吸着特性の測定は100℃、1 Paの真空中前処理を施した後に行ない、25℃の相対圧0.4において約50 cm3/gの水蒸気吸着が確認された。35℃で測定された同様の等温線を用いることで吸着熱は165 J/gと算出された。DSCにより測定された吸着熱は146.9 J/gとなり良い一致を示した。 一方、ラマン分光法からはCeO2ナノ粒子表面に有機物が付着していることが確認され、より高い吸着熱を得るためにはその除去が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の課題は、セリアナノ粒子を合成し、その水蒸気吸着特性と吸着熱を明らかとすることにある。研究実績の概要に記載したとおり、粒径10 nm以下のセリアナノ粒子の合成に成功し、約50 cm3/gの水蒸気吸着と150 J/g程度の吸着熱を有することを明らかとした。さらに、CeO2ナノ粒子表面への有機物付着が吸着熱の抑制の原因であることを明らかとしており改善指針を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の潜熱蓄熱材料の蓄熱量はおよそ 300 J/gであり、今回作製された CeO2ナノ粒子より得られる蓄熱量はその半分程度となっている。そこで、まずはその吸着熱の改善が必須である。ラマン分光法からはCeO2ナノ粒子表面に有機物が付着していることが示されており、オゾン酸化などによりその除去が可能であればさらなる吸着熱の増加が見込める。さらに、CeO2ナノ粒子よりも比重の軽い酸化物ナノ粒子の適用を試みる。さらに、ナノ粒子酸化物を大量に合成し、実際に蓄熱が可能か否かの原理実証を来年度に実施する。
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