2014 Fiscal Year Research-status Report
エレクトロクロミック薄膜を用いた水素透過セルによる鋼への優先水素侵入サイトの解明
Project/Area Number |
26630357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 優 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40599057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 泉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20400278)
原 信義 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40111257)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素脆化 / エレクトロクロミズム / 水素侵入 / 大気腐食 / スパッタ |
Outline of Annual Research Achievements |
省資源・省エネルギーの観点から、高張力鋼に代表される高強度構造材料の使用の拡大が検討されており、水素脆化の機構解明が急務となっている。鋼材への水素侵入原因の一つは、大気腐食における水(及びプロトン)の還元反応によるものである。これまで、大気腐食環境における水素侵入現象の評価には、水の還元に伴って侵入・拡散した水素原子を、反対側表面で酸化して定量する電気化学水素透過法が多用されてきた。しかし、水素侵入サイトを特定することはできないため、腐食形態と水素侵入機構との対応関係は不明である。そこで、水素侵入分布を可視化できる水素透過セルを開発し、鋼材表面における優先水素侵入サイトを明らかにすることを本研究の目的とした。本研究では、水素の侵入分布を可視化するため、WO3のエレクトロクロミズムを利用した。透明のWO3を水素検出側にコーティングし、鋼材に侵入し拡散してきた水素原子と反応させる。この際に形成するHxWO3が青色を呈することから、色彩の変化で水素の侵入を評価することを試みた。 Wの陽極酸化法やスパッタリング法を行い、本研究で行う水素侵入分布評価に資するWO3薄膜の形成法を検討した。作製したWO3薄膜のエレクトロクロミック特性の評価により、マグネトロンスパッタ装置を用いた反応性スパッタリングで形成したWO3が最も適していると判断された。この手法によりWO3を水素検出側にコーティングした純鉄を用いて、水素侵入側からカソード分極により水素を侵入させると、侵入側で水素発生反応が起こっている箇所に対応する検出側のWO3の色彩が変化していく様子が観察され、WO3のクロミック効果によって鋼材に侵入し透過した水素を検出できることが分かった。またYUV色空間の輝度のパラメータを用いて、色の変化を定量化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マグネトロンスパッタ装置を用いた反応性スパッタリングによって形成したWO3薄膜が最もエレクトロクロミック特性が高いこと見出し、このWO3薄膜を用いて水素侵入分布を評価できる水素透過セルの構築に成功した。位置分解能・時間分解能を改善する必要があるが、鋼材に侵入し透過する水素原子の検出に成功できたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進展しており、当初の計画通りに進めることで目的は達成されると考えられる。 H26年度に構築したWO3薄膜を用いた水素透過セルを用いて、めっきや塗膜、金属組織が水素侵入に与える影響を解析する。WO3の厚さや結晶化度、鋼材の厚さ等を変化させて、位置分解能・時間分解能を向上させ、不均一性を有する表面において優先的に水素が侵入するサイトを明らかにする。
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Causes of Carryover |
設備備品費として計上していたデジタルハイビジョンカメラや小型環境試験器は、所属研究室で所有していたものを使用し、消耗品費として計上していたスパッタ用のターゲット等も所属研究室で残存していたものを使用できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計上している消耗品費に加え、昨年度で試料金属やスパッタ用ターゲット、ガラス基板等をほぼ消費したため、消耗品として追加購入する。また、国内・海外成果発表旅費や論文投稿料に充てる。
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