2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630360
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大竹 尚登 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40213756)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 材料加工・処理 / 構造・機能材料 / プラズマ加工 / 機械材料・材料力学 / 機械工作・生産工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,3Dプリンタなどの三次元創成技術が注目されているが,材料に制限があること,強度が造形物の形状や大きさに依存すること,精度が機械加工に及ばないなど課題も多い.本研究では,最小積層単位であるイオンを用いることで,材料,精度,強度の問題を解決した次世代の三次元創成技術の開発を目指す.そのために,アーク放電により高密度のイオンビームが生成可能なフィルタード陰極真空アーク(Filtered Cathodic Vacuum Arc:FCVA)法により炭素イオンビームを生成し,静電レンズを用いてそれを収束し,基板上にアモルファス炭素の堆積を試みた.静電レンズを製作するために,イオンビームの収束のシミュレーションを行った.静電レンズとして,三枚の円盤状の電極からなり,中央のレンズに電圧をかけてイオンビームを収束させるアインツェルレンズを用いる.静電レンズ付近の電位を求めるために,軸対称のポアソン方程式を有限差分法により求め,電位から電場を算出し,荷電粒子の運動方程式を4次ルンゲクッタ法により求めた.計算された電場をFCVA装置に静電レンズを設置し,イオンビームの収束実験を行った.グラファイトターゲットを用いて,アーク電流38 A,基板バイアス-100 V,時間 15 minで炭素膜を作製した.静電レンズの電圧の違いによる炭素膜の膜厚分布を調べたところ,電圧が上昇すると膜の半径は減少するが,同時に膜厚も減少した.基板へ向かって直進するイオンビームを収束させた場合,膜の形成半径は縮小し,膜厚は増加すると予想されるが,本実験では膜厚は減少した.これはイオンの入射エネルギーが一定ではなかったため,入射するエネルギーの違いにより焦点にばらつき出たこと,およびイオンビーム内部のイオンと電子の間でクーロン力の発生により,イオンビームは発散しながら進んだことが原因であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
革新的製造プロセスとして,高密度イオンを用いた,実材料の高精度三次元部材創成法を開発することを目的とする。金属材料・炭素材料のイオンを前駆体として,入射イオンエネルギーを制御しながら10×10×3mm3の炭素部材および鉄鋼部材を15μmの精度で作製することを試みることを研究目標としている。それに対して,高密度のイオンビームを用いた高精度な三次元創成技術の開発を目指して,FCVA法により生成した炭素イオンビームの静電レンズによる収束を試みた.まず,シミュレーションにより,イオンビームの収束に適した静電レンズのサイズを明らかにし,それを基に,実際に静電レンズを製作して,炭素イオンビームの収束実験を行った.その結果,アモルファス炭素の堆積範囲を縮小できたが,膜厚が減少したため,イオンビームの収束に最適な条件をさらに検討する必要があることがわかった.アーク放電高密度のイオンビームを生成するのは高度な技術であり,今年度設計計算を終え,予定通りに装置を組み上げ切って実験を行うことが出来たことは,進捗として大きい.さらに静電レンズに印加する電圧を変化させて収束度合いを検討することが出来た.収束は目標に対して十分でなく,次年度の明確な課題となる. 以上のことから,概ね順調に進行していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
炭素の連続堆積実験を行って炭素イオンビームの集束を確認するとともに,アーク放電条件・磁気フィルタ強度と堆積速度および炭素の構造との関係を明らかにする。炭素の構造はラマン分光分析によるsp2構造分析とNEXAFS(吸収端近傍X線微細構造)によるsp3/sp2構造比分析により行う。次に,固体原料を鉄と炭素の二元として連続堆積を行い,高密度イオン源からの入射イオンエネルギーおよび基材温度が,生成材料の結晶組織・結晶粒径にどのような影響を及ぼすかを明らかにする。イオンエネルギーを制御することにより,より低い基材温度での結晶化を狙いながら,結晶粒径を微細化出来るイオンエネルギーと基材温度との関係を導出する。ついで開発装置を用いて,炭素の高密度集束イオンビームを生成し,シリコンを基材として,基材のX-Yスキャンとナノパルス印加を組み合わせることにより,10×10×3mm3の炭素部材を前述の通り±15μmの精度で作製する。さらに炭素/鉄比0.45wt.%の高密度集束イオンビームを生成し,鉄鋼部材の成形を試みる。最後に成形品の内部応力分布を測定するとともに,組織とヤング率,引張強さ,硬さについてバルク材料と比較し,本三次元部材創成法の有効性を検証する。
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