2015 Fiscal Year Research-status Report
超微細加工技術を利用した超高効率金属-酵素ハイブリッド水素発生触媒電極の開発
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26630370
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水素発生酵素 / 水素発生電極 / ナノポーラス / ナノ結晶組織 / アモルファス構造 / 金属ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
水素発生酵素であるヒドロゲナーゼを導電性の電極基板に高密度に坦持するため、20~30nmの多孔質構造を有する金属電極の開発を目的とした。 本年度は、高強度・高靭性を有するZr基金属ガラスを出発材料としナノポーラス化を試みた.Zr65Cu17Ni5Al10M3(M=Pd, Cr, Nb)を合金組成(以降Zr65-Pd3, Zr65-Cr3, Zr65-Nb3)とし,単ロール液体急冷法によりリボン材を作製し急冷材とした.急冷材をガラス転移温度(Tg)および(Tg+20) Kで1.8 ksの真空焼鈍を施し熱処理材とした.その後0.1 M HCl+2 M NaF溶液中で選択エッチングを行った.電極の評価として0.1 M リン酸緩衝液中でのサイクリックボルタンメトリー測定を行った. X線回折測定結果から,Zr65-Pd3, Zr65-Cr3, Zr65-Nb3合金のいずれの急冷材もアモルファス相を有していた.Zr65-Pd3合金ではガラス転移温度(Tg)及びTg+20 Kまでの加熱処理により(ガラス+準結晶)の複合組織となった.上記の試料を0.1 M HCl+2 M NaF水溶液中で電解エッチングを行ったところ,アモルファスおよび準結晶相を示した試料において表面ナノポーラスを形成した.一方,Zr2Cuの析出が認められた試料において, リガメントは消失し,表面ナノポーラスを形成しなかった.したがって,表面ナノポーラスの形成にはアモルファス+準結晶相の複合組織の形成が重要だと考えられる.ナノポーラス構造を形成するリガメントは, Pd,Zr,及びAlからなり,準結晶相を構成する元素に近いことが分かった.炭素蒸着材の酵素担持後のサイクリックボルタンメトリー測定の結果から,還元反応側で酵素の水素発生による電流値の増加,また,酸化反応側で水素分解による電流値の増加が観測できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 金属ガラス表面での2段階表面微細構造の形成 金属触媒基板の比表面積を向上させるために超微細成形加工技術を適用した。約10 nmのヒドロゲナーゼを効率よく担持するには,大きさ約10~50 nmの表面凹凸を電極上において高密度に形成することが好ましい.このため本研究では,①電析法により高強度Ni-Wナノ結晶合金を作製し、これを用いて超微細金型を作製した。この金型を用いて、②Zr69Cu16Ni5Al10金属ガラス合金(Zr69)金属ガラスへの形状転写加工を用いて金属ガラス表面にサブミクロンスケールの規則的な凹凸を成形することができ,さらに、③脱成分エッチング処理を用いて,10~100 nm程度のナノスケールの気孔を自己組織形成させる二段階処理を行った.このように、ナノポーラス化等の表面処理技術に加えて、金属-金属ナノインプリント超微細加工技術を組み合わせることにより、さらなる高比表面積化が可能となった。 2 金属ガラス電極基板表面のナノポーラス化 Zrは生体適合性の高い材料であり、生体酵素担持材料としての利用が期待される。Zr-Cu-Ni-Al系金属ガラスにPd, Pt, AgもしくはAu等の貴金属を添加すると、ナノサイズの準結晶相が析出し、これにより高塑性変形性が付与されることが明らかとなった。これらナノサイズの準結晶相が析出したZr-Cu-Ni-Al-Au系金属ガラスの表面にエッチング処理することにより、電極表面のナノポーラス化を試み、数十ナノメートルから数百ナノメートルの範囲でナノポーラス構造を制御することが可能となった。 以上のように、本件に関しては、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 高強度アモルファス・ナノ結晶合金触媒材料の開発 高強度・高延性を有するとともに、水素発生触媒機能を有する合金を電解析出法等で開発する。超微細成形に適したナノ結晶/アモルファス複合構造を有する合金系を対象として、電析Ni-Wナノ結晶合金の作製とZr系を代表とする金属ガラスの組成最適化を行う。これらの開発した合金について、静的および動的耐久試験を行い、水素発生機能ばかりでなく、実用面に耐える材料強度をゆうするか同時に確認していく。 (2) ナノ相分離・脱成分加工と超微細加工技術による超高比表面積の金属触媒電極の開発 合金の比表面積を向上させるために超微細成形加工技術を適用する。約10 nmのヒドロゲナーゼを効率よく担持するには,大きさ約10~50 nmの表面凹凸を電極上において高密度に形成することが好ましい.このため昨年度までに開発したプロセスを用い、①電析法により高強度Ni-Wナノ結晶合金超微細金型を作製する。この金型を用いて、②金属ガラスへの形状転写加工を用いて金属ガラス表面にサブミクロン;ミクロンスケールの規則的な凹凸を成形,さらに、③脱成分加工を用いて,凹凸成形部の表面に,更に,10~100 nm程度のナノスケールの気孔を自己組織形成させる二段階処理(2)を行う.この二段階処理で作製した鉄族元素ポーラス体は導電性および耐食性に優れ、ヒドロゲナーゼを高密度に担持することが出来ると期待される.成形後の形状評価を「高分解能走査電子顕微鏡」,および「走査型プローブ顕微鏡」を用いて行う.仮に,ヒドロゲナーゼが有効に作用しない場合でも、これまでの成果において,高比表面積の電極だけでも、水素発生電位に大きな影響が認められることから、これを用いて水素エネルギーシステムを構築を検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、電極基板となる金属材料表面のナノポーラス化技術に重点をおいたため、素材原料費が比較的安くすんだ。このため、物品費が予定よりも少なく、(B-A)の金額が219,290円となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、ナノポーラス化した金属電極表面に、ヒドロゲナーゼを担持させる作業が必要となり、薬品購入費が大きくなると予想され、その経費に利用する予定である。
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