2015 Fiscal Year Research-status Report
スカンジウムおよびAl-Sc合金の革新的製造技術の創出
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26630375
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00280884)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スカンジウム / 製錬 / レアメタル / 溶融塩電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
イットリウムやランタノイドとともに希土類元素に分類されるスカンジウム(Sc)は、酸化物を還元して金属を製造するのが困難な元素である。スカンジウムは、資源的には豊富である。また、アルミニウム合金へのスカンジウムの添加は、機械的特性の飛躍的な向上だけでなく、溶接性、鋳造性、耐食性など様々な特性を改善に寄与することが知られている。現時点では、生産コストが高いため、スカンジウムの需要は限られた量である。しかし、金属スカンジウムあるいはAl-Sc合金が安価に製造できるようになれば、スカンジウムの需要は劇的に増大すると予想される。 通常、金属スカンジウムは、還元が容易なフッ化物に変換してから、金属カルシウムにより還元することで製造されている。しかし、本プロセスでは、フッ化工程を経るため、コストおよび環境負荷が大きいという問題を抱えている。そこで、本研究では、電気化学的な手法により酸化スカンジウム原料を直接還元し、酸化物から金属ScおよびAl-Sc母合金を効率良くかつ連続的に製造する革新的プロセスを確立するため、酸化スカンジウムの溶融塩電解に関する各要素技術の開発を行う。 平成27年度は、1173 K程度の温度域において、塩化カルシウム-酸化スカンジウム系溶融塩の電気化学的性質をサイクリックボルタンメトリ―測定により調査した。またアルミニウムを陰極、炭素を陽極として直流電解を行った。電解後の陰極をXRDにより分析したところ、アルミニウムとスカンジウムの金属間化合物を含むことが確認された。本結果により、塩化カルシウム中での溶融塩電解によってスカンジウム合金を酸化物から直接かつ連続的に製造できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、酸化スカンジウムを溶解した塩化カルシウムについて、各種電気化学測定による評価を行った。その結果、原理上は、Al-Sc合金を溶融塩電解により製造できることを示すことができた。従って、研究は順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
溶融塩電解時におけるカルシウムや炭素などの挙動についても評価・解析を行う。さらに、出発原料として純度の低い酸化スカンジウムを利用する場合、得られるスカンジウムの純度がどこまで上げられるかについても、実験的な検証を行う。
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Causes of Carryover |
情報収集などに関する国内出張1件を取りやめた。また、実験データなどの取りまとめのための人件費・謝金の支出を行わなかったため繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については、国際会議や国際ワークショップでの成果発表や海外の研究機関での技術討論に関する旅費として使用予定である。平成28年度分の助成金については、当初の予定通り、溶融塩電解装置の保守・改造に必要な各種消耗品の購入費、資源素材学会などの国内での成果発表のための旅費、実験データ取りまとめのための人件費・謝金、論文投稿などの成果報告のための経費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)