2014 Fiscal Year Research-status Report
有機スラリーのゲル化を利用した多孔質微粒子の高強度成形法と構造制御法の開発
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26630389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田門 肇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ゾル‐ゲル法 / 微粒子成形 / 一方向凍結 / テンプレート合成 / 構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 吸着材,触媒担体として優れた機能をもつ多孔質微粒子の高強度マクロポーラス成形体を開発することを目的とする。具体的には,活性炭などの微粒子を含有するスラリーの一方向凍結によって氷晶を成長させ,凍結乾燥によってマイクロハニカム状に成形し,炭素化によってカーボン成形体を作製する手法を確立する。平成26年度は,以下の研究成果が得られた。 フェノールとホルムアルデヒドに,触媒として炭酸ナトリウム,希釈剤として蒸留水を加え,有機ゲルを合成した。次に,一方向凍結により,ハニカム状に成形し,凍結乾燥,炭素化によってマイクロハニカム状カーボン(CMH)を作製した。フェノールを原料として作製したCMHは,レゾルシノールから作製したCMHに比べてハニカム開口径が大きいことがわかった。得られたCMHに二酸化炭素賦活を行うことでBET表面積とミクロ孔容積が大幅に向上することがわかった。 フェノールとホルムアルデヒドから調製した原料ゾルに粉末状の市販活性炭を添加し,一方向凍結,凍結乾燥,炭素化によって活性炭の成形体を作製した。作製試料の断面SEM画像から,活性炭をマイクロハニカム状に成形することが可能で,連通気孔径は100μm以上であることを明らかにした。CMHはミクロ孔をほとんどもたずにメソ細孔性である。したがって,活性炭をマイクロハニカム状に成形してもメソ孔容積の顕著な低下は見受けられない。一方,ミクロ孔容積は成形することによって低下するものの,活性炭含有率から考えて低下は著しくなかった。これは,活性炭粒子がカーボンゲルの構造に影響を与えていると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の開発数値目標は,連通気孔径:100μm以上,成形体強度:圧縮強度2MPa以上,ナノ細孔特性:多孔質微粒子の細孔特性保持である。研究成果の概要に述べたように,開発目標中の連通気孔径とナノ細孔特性を満たすマクロポーラス成形体を作製することに成功した。 交付申請書の研究計画で27年度に実施予定の多孔構造制御に関して,有機ゲルを利用する場合,凍結条件(凍結温度,凍結速度)に検討を加えている。レゾルシノールとホルムアルデヒドおよびフェノールとホルムアルデヒドから作製したCMHの気孔径(マクロ細孔径)が凍結温度と冷媒中へのゲル浸漬速度(凍結速度)を用いて相関できることを明らかにした。したがって,当初の計画以上に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
有機スラリーのゲル化を利用して多孔質微粒子の高強度成形法と構造制御法を確立するために,今後は交付申請書に従って研究を実施するが,平成26年度の進捗状況を鑑みて,当初計画に多孔質粒子としてアルミナ粒子を追加する。 (1)多孔構造制御 高強度で連通気孔をもつ成形体を作製するには,気孔率,気孔径,壁構造を制御する必要がある。成形体の作製条件と構造解析結果より,多孔構造の制御因子を下記のように明確化し,100μm以上の連通気孔径をもつ成形体を作製する。成形体の気孔径(マクロ細孔径)の制御因子としては,多孔質微粒子濃度,バインダーと溶媒の種類,凍結条件(凍結温度,凍結速度),炭素化条件(炭素化温度,昇温速度)が考えられるので,実験的に詳細な検討を加え,高強度の成形体が具備すべき多孔構造を明確にする。さらに,一方向凍結時の熱流束シミュレーションを実施し,理論的な裏付けを与える。 (2)成形体の高強度化 マクロポーラス成形体強度の制御因子を下記のように明確化し,圧縮強度2MPa以上の成形体を作製する。なお,荷重負荷による破壊試験によって作製した成形体の強度を測定する。成形体の高強度化のためには,気孔を形成する壁厚の増加,炭素化の適切な進行が重要である。壁厚の増加には,スラリー溶液の選定と凍結速度の増加が有効である。炭素化を十分に進行させるには,バインダーの種類,溶媒の選定,昇温速度,炭素化温度に詳細な検討を加える必要がある。 (3)微粒子成形法としての評価と総括 吸着材や触媒担体として使用するためには,強度と細孔連通性が重要である。交付申請書記載の開発目標に基づいて材料を評価し,本研究を総括する。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究経費のうちで375,971円を平成27年度に持ち越すことになった。交付申請書の物品費では,平成26年度に石英管の購入費を計上していた。石英管は高温で炭素化して微粒子を成形するために使用される。石英管は高価な消耗品であり,破損などでの補充を想定して購入費用を計上していた。しかし,研究遂行時に想定ほど補充の必要がなかったのが経費持ち越しの主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
有機スラリーのゲル化を利用して多孔質微粒子の高強度成形法と構造制御法を確立するために,今後は交付申請書に従って研究を実施する。しかし,平成26年度に当初計画以上に研究が進展したために,当初計画に多孔質粒子としてアルミナ粒子を追加する。このために,平成26年度の持ち越し研究費から物品費として27万円を使用する予定である。また,研究の進捗状況を鑑み,対外発表を充実させる予定である。このための旅費として10万円を追加使用する計画を立てている。 先ず,多孔構造の制御因子を明確化し,100μm以上の連通気孔径をもつ成形体を作製し,成形体のマクロ構造を制御する方法を確立する。次に,壁厚の増加と炭素化の十分な進行の観点から,成形体の高強度化を検討する。さらに,交付申請書記載の開発目標に基づいて材料を評価し,本研究を総括する。
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Research Products
(4 results)