2015 Fiscal Year Research-status Report
多孔性錯体ナノ粒子の粒径・形状制御手法の確立と吸着機能設計
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26630391
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮原 稔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60200200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 哲 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80402957)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 柔軟性多孔性結晶 / Metal-organic frameworks / ZIF-8 / GCMC法 / 自由エネルギー解析 / ゲート吸着 / 配位空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,柔軟性多孔性結晶(Soft Porous Crystals; SPC)と呼ばれる多孔性材料が,注目を集めている。SPCは,金属イオンと有機配位子が自己集合的に組み上がった多孔性の有機金属錯体(MOF)の1種であり,その構造の柔軟性ゆえに無孔構造から多孔構造へとステップ状に構造転移することが特徴である。SPC特有の「ゲート吸着」と呼ばれる,圧力の閾値における急激なガス吸着現象は,この構造転移に起因するもので,ガス吸着だけでなく分子メモリやセンサーなどへの応用が期待されている。本研究では,SPCが示すゲート吸着挙動を,粒子径および粒子形状という物理的因子により制御し,所望の条件での構造転移を示す材料設計指針の確立を目指す。本年度は,Zeolitic Imidazolate Framework-8 (ZIF-8)を対象にGrand Canonical Monte Carlo法を用いた吸着シミュレーションを行った。昨年度の検討で,粒子サイズに応じてゲート吸着圧が変化することを見出しているため,そのメカニズムを解明することが目的である。ZIF-8結晶のサイズを変化させた吸着シミュレーションを行い,得られた吸着量を積分することにより系全体の自由エネルギーを計算した。この際,有機配位子の回転角度は,構造転移後に相当する角度に固定した。吸着圧力が増加するに従って,分子吸着に起因する安定化効果が大きくなるため系の自由エネルギーは低下した。自由エネルギーが構造転移前の値よりも小さくなった点が平衡の構造転移点であるが,その圧力は結晶サイズが小さくなるほど大きくなった。この傾向は実験結果と定性的に一致しており,サイズが小さくなるほど結晶表面近傍のポテンシャルが小さい部分の割合が大きくなり,吸着安定化の寄与が小さくなるためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZIF-8構造をモデル化し,吸着シミュレーションを行い,結晶サイズ依存性が発現する原因を明らかにするなど,研究実施計画で示した内容が達成されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,当初の予定どおり,ELM-12という層状構造を有するSPCを対象に,マイクロリアクタを用いた合成を行い,粒子サイズ,形状がゲート吸着現象に与える影響を検討する。その上で,27年度までに得られたZIF-8との比較を行い,結晶構造および構造転移の機構がゲート吸着現象とどのような関係にあるかを明らかにし,SPCが示す構造転移挙動と粒径・形状との関係を普遍的に記述する工学モデル構築を試みる。
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