2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ凹凸体を利用したナノ構造体の大規模階層化技術の開発
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26630393
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木原 伸一 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30284524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝嶌 繁樹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10188120)
春木 将司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90432682)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Polymer nanoparticle / Metal coating / Supercritical CO2 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノコンポジット材料の開発の課題として、ナノスケールの素構造を大規模に緻密化する簡易的な方法の確立があげられる。本研究ではマイクロ・ナノスケールで成形された量産可能な高分子シートのパターン構造を起点として、自己組織化によりナノ構造体を大規模に形成する方法を開発する。初年度は素構造の元になるナノ粒子の部分金属被覆実験を主に行った。 (i)【ナノ粒子への金属の被覆】表面がフッ素で部分的に改質された架橋ポリスチレン(XPS)ナノ粒子とフッ素基置換された配位子をもつ金属錯体(融点100℃)を、8MPaCO2および0.4MPa H2、雰囲気温度80℃で1時間静置し、XPSナノ粒子表面の部分金属被覆実験を行った。減圧時にナノ粒子のほとんどが放出したが、セル内に残存した粒子のSEM観察およびEDXにより元素分析を行った。金属被覆できておらず、粒子融着が還元よりも優先していることがわかった。尚、この非還元状態の原因は、圧力センサー自体からガスリークが見られたことが原因と推定される。次年度で、ディッシュにPTFEフィルターで覆うなどしてセルからの粒子放出を抑え、ガスリークのない状態で再実験を繰り返す。 一方で、金属錯体のみでH2/CO2 (0.4MPa/10MPa) 200℃で還元すると0.5hでも還元され、ポリスチレンとともに還元するとポリスチレンが溶融してしまうが、時間を2h以上かければ150℃付近から還元が進行した。還元後のガス成分をGCMS測定した結果、ポリスチレン由来のベンゼン、配位子から推定される成分が主に観察されたことから、低温還元ではポリマー自体の熱分解により発生した水素を併用することで還元反応が促進されることが推定された。 (ii)【金属錯体の溶解性の測定】(iii)【被覆過程のモデリングと被覆評価】(iv) 【金属被覆層の再設計】については、次年度に実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究達成度は本研究計画に対して、素構造粒子作製が成功していると言えず、やや遅れている。理由として、バッチセルでの複数の圧力センサーからのリークの判断に時間を要したことが挙げられる。僅かなリークであったが還元ガスであるH2のリークがバッチ式の本実験では予想以上に影響し、設定条件では還元に至らなかった可能性が高いと推定している。次年度では圧力センサーおよび還元セル自体を新調して実験実施する。また、水素による金属錯体の還元温度は炭化水素化合物存在下ではより低温状態で進行することが確認されたが、粒子融着を抑えた100℃以下の温度では水素還元は難しいことがわかった。このため、より架橋度の高い粒子を作製する、また、超臨界噴霧法によりSi-Siで部分的に結合したより熱的に安定なフッ素系ナノ粒子(20nm径)が作製できたのでそれを含めてベース材料として部分金属被覆することを試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の時点では、十分な成果が得られていないが、その原因が装置自体にあることが十分予想されるので、まずは、その改善を実施し、粒子の金属被覆制御方法を明らかにする。その後、すぐに、以下予定している〔ナノ構造体を階層構造化するパターニング方法の開発〕を2つの方法を通して検討する。 (v) 【Scheme1】ポリカーボネート樹脂(PC、ガラス転移温度150℃)からなるナノ・マイクロ凹凸構造のあるシートを高圧セルに入れ、(i)の条件で粒子分散させ孔内に粒子を堆積させる。温度は100度前後の低温で、SCF-CO2の可塑化により先端部分は膨潤し粒子飛散を防ぐことができると期待される。また、セル壁面は数十nmなので、拡散によりCO2が放出されやすく、結果的に発泡などの空洞化は抑えられると予想される。次に金属錯体/SCF-CO2、続いてH2/SCF-CO2を導入し、金属錯体を還元する。部分金属被覆ナノ構造体の方向性を維持するために、ネオジウムなどの永久磁石を配置し下面に付着力を増して、かつ、ナノ粒子配列化を行う。 (vi)【Scheme2】ブロック共重合体を有機溶媒に溶解し高分子シートに塗布・乾燥し、高圧セルにいれ、SCF-CO2を導入し静置して自己組織化を促進させる。Scheme1と同様にしてナノ構造体を高分子種の溶解選択性を利用して配列させ、さらに自己組織化させる。 (vii)【階層構造化】(v),(vi)にて作製した複合シートを、基材高分子のガラス転移温度付近まで温度をあげて圧縮成形し、ナノ構造体(架橋された粒子であるため熱変形しにくい)の界面間距離を調整する。光学特性を(iii)と同様の方法で特性を評価する。温度に対して高分子相の僅かな収縮率の違いを利用して光学的応答がどのように変化するかを測定し、温度スイッチング動作の可能性を評価する。
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Causes of Carryover |
中古で高性能UV vis装置を購入予定であったが、本測定に見あうものが得られなかった。しかし、他の研究室での使用が可能であるので、それを利用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
金属錯体は高価であるので、その購入にあて実験の回数を増す。窒素ガスは水素を使う実験での安全のためにも使用しているので、その購入に充てる。
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