2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノサイズで新規な構造を有するナノ電池の創製と原理検証
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26630401
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岸田 昌浩 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60243903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ電池 / コアシェル粒子 / カーボンナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は,白金を代表とする金属ナノ粒子(コア)をシリカ(シェル)で被覆したコアシェルナノ粒子を調製し,そのコアシェルナノ粒子からカーボンナノチューブ(CNT)を生成させて,半電池として機能するかどうかを調べた. まず白金ナノ粒子をシリカで被覆したコアシェルナノ粒子を調製した.次に,この粒子の構造制御を行う予定であったが,初期の構造制御よりもCNT生成後の構造維持の方が重要であることがわかってきた.そこで,CNTを生成しやすいと考えられる,鉄コア-シリカシェルナノ粒子も調製し,次の検討に進んだ. これらのコアシェルナノ粒子に700℃でエチレンあるいはエチレン-水素混合ガスを供給することでCNTを生成させた.鉄コアの試料ではエチレンのみを供給することでCNTが生成したが,CNT生成後にはシリカシェル構造が壊れていた.白金コアの粒子に対しては,エチレン-水素混合ガスを供給し,水素分圧を調整することでCNTを生成させることができた.しかし,この試料でもシリカシェルが破壊されているように観察された.そこで,鉄コア-シリカシェルのナノ粒子を取りあげて,シリカ層の厚さを20~100nmの範囲で制御し,CNTを生成させる検討を行った.しかし,いずれの試料でもCNT生成時にシリカシェルが破壊された. シリカ構造が破壊された試料の半電池としての電気化学的評価を行ったところ,鉄コアの電気的な酸化還元挙動を観測することができた.しかし,鉄が露出している可能性が高く,シリカシェルで覆われた目的の構造を構築できたとは言えなかった. そこで,本研究着想の発端となったニッケルコア-シリカシェルナノ粒子を調製しCNTを生成させた.その結果,研究着想時と同様に,径の揃った均一なCNTが生成し,シリカシェルの破壊も認められなかった.H27年度は,このコアシェルナノ粒子を用いて検討を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究を着想するきっかけは,ニッケルコア-シリカシェルナノ粒子からシリカシェル構造を破壊することなくカーボンナノチューブが生成することを見出したことであった.その結果から,コア金属を電池に適した金属種に変えることで,ナノ電池を開発できるのではないかと考えた.しかし,H26年度に実験を始めたところ,コア金属をニッケルから白金あるいは鉄に変更すると,カーボンナノチューブの生成によってシリカシェルが破壊されるという課題があることがわかった.これは研究開始時には予想できなかったことで,そのために研究の進展が遅れることとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度には今,H26年度末に確認したようにニッケルコア-シリカシェルのナノ粒子からカーボンナノチューブを調製し,半電池としての機能を評価する. また,CNT生成時間を調整することで,生成するCNTの長さを制御することを試みる.この制御に成功できなくても電池としての機能に支障はないが,CNTの長さが短い方が,ナノ電池としての評価を行いやすくなるという利点がある. ニッケルコア-シリカシェルのナノ粒子で電池機能が認められた場合には,半電池試料の外表面に白金ナノ粒子(当初予定では鉄)を固定化して,ナノ電池を構築する.白金ナノ粒子の固定化には含浸法を用いる.さらに,できるだけ多くのナノ電池を調製して,非常に高い密度で硫酸中に分散させ,炭素の局所酸化による試料の微小重量変化を熱重量測定計と組み合わせて計測し,ナノ電池としての可能性を評価する.
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