2014 Fiscal Year Research-status Report
Development of microchip for identification and separation of circulating tumor cell in blood
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26630418
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長棟 輝行 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20124373)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血中循環がん細胞 / マイクロ流路 / 細胞アレイ / 光パターニング / 細胞回収技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の細胞を解析し、その中から必要な細胞を選択・回収する技術は、多くの分野において重要な技術である。そこで本研究では、光分解性の細胞固定化剤を用いて一細胞ずつ並べた大規模細胞アレイを作製し、細胞形態や細胞内分子動態なども含めた多角的な解析を行い、目的に適う細胞のみを光照射と送液によって迅速簡便に回収することが可能な細胞チップの開発を目的とした。 新規な光分解性細胞固定化剤として、細胞吸着阻害性を有する2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)、安定したコート表面を構築可能なButyl methacrylate (BMA)、そしてメタクリル化光分解性PEG脂質をモノマーとして含有したコポリマーを開発した。このコポリマーをコートした表面を用いて、光分解性PEG脂質表面のフォトリソグラフィーパターンの最適化を行い、固定化細胞の高密度化を試みた。アレイスポット間距離を徐々に縮めていったところ、最終的には1 平方cmあたり50万個の細胞の超高密度一細胞アレイの構築に成功した。さらに、一細胞アレイからの一細胞単位の光遊離にも成功した。細胞の光遊離のスループットを計算したところ一細胞あたり5秒であった。以上の結果から、光分解性PEG脂質コポリマー表面を用いることによって、ハイスループットに一細胞アレイから目的細胞を一細胞単位で遊離回収できることが示された。 また、本技術で作製した一細胞アレイを用いた細胞解析系の構築を行った。画像解析ソフトのImageJを用いて細胞画像解析プログラムを作製し、一細胞アレイに適用したところ、これまで解析が困難であった一細胞単位の運動性や形態変化といった複雑な現象を、迅速かつ定量的に画像解析することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、血液中を循環するがん細胞(CTC)や、抗原特異的な抗体を産生する細胞、免疫細胞療法における活性化T細胞・樹状細胞など、10の6乗個以上の細胞中に僅か数個しか存在しない貴重な細胞を検出し、回収するニーズが医療や細胞生物学の分野で高まっている。したがって、そのような稀少な細胞の検出・回収が可能になるよう、10の6乗個以上の細胞が配置された高集積化一細胞アレイの作製、および一細胞アレイからの望みの細胞を光遊離・回収する技術の開発を研究目的とした。今年度は、新規な光分解性細胞固定化剤を開発し、1平方 cmあたり50万細胞の超高密度一細胞アレイの構築ならびに一細胞単位の細胞光遊離にも成功し、ほぼ、今年度の当初の研究目標を達成することができた。次に、10の6乗個以上の細胞を固定化し、光照射と流体による剪断応力負荷によって目的細胞を遊離回収するために、CDディスク上に流路の幅5 mm, 高さ0.1 mm, 底面積80平方 cm以上の螺旋状大型マイクロ流路を試作した。光分解性細胞固定化剤を修飾したこの流路の底面に細胞をアレイ化し、目的とする細胞の光遊離・回収を試みた。しかし、シリンジポンプによってマイクロ流路に送液を行い、光照射した細胞の光遊離に必要なせん断応力の負荷を行ったところ、流路内に発生した大量の気泡によって、光を照射していない細胞までも脱離してしまった。この気泡の発生は、流路長が極めて長いため圧力損失が非常に大きくなり、流路内圧力が大きく低下したことに起因すると考えられる。このように、高集積化マイクロ流体チップからの細胞回収技術の確立のためには未だ解決すべき課題が残されているものの、その他の研究課題については、進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
【大規模一細胞アレイを用いた末梢血からのCTCの検出】これまでの研究によって、精密かつ超高密度な一細胞アレイが作製可能となった。本技術を用い、基板上に10の6乗個以上の細胞からなる大規模一細胞アレイを作製し、GFP発現高転移性ヒトがん細胞を担癌したマウスの末梢血からのCTCの検出を行う。検出方法としては、がん細胞を標識したGFP蛍光、細胞形態、蛍光標識抗体を用いた細胞表面マーカーCD44の発現レベルといった多角的なパラメーターを、構築した細胞解析系を用いて迅速かつ定量的に取得し、各種白血球の値と比較する。 【細胞回収流路デバイスの構築】細胞の光回収が可能な高集積化マイクロ流路の作製において、気泡の発生が問題となっている。そこで、流路内圧力の低下によると考えられる気泡の発生の抑制方法を検討する。例えば、シリンジポンプによる送液と同時に、流路出口からの吸引を行う方法が考えられる。もしくは、流路を分岐させて広い総底面積を持つ多数の並列流路とすることにより、実質的な流路断面積の拡大を行い、圧力損失を緩和することによって気泡の抑制が可能となると考えられる。 【光応答性細胞固定化剤の改良】光分解性PEG脂質のMPCやBMAとの共重合により、一細胞アレイ化と細胞光遊離を可能とするポリマーの開発に成功した。今後、これらのモノマーの比率や光分解性基の最適化を行い、光照射した細胞がより遊離しやすく、光照射していない細胞がより強く基板に固定されるポリマーの開発を行う。
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