2014 Fiscal Year Research-status Report
万能細胞培養技術標準化のための培養経過全貌のFingerprint評価法
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26630427
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 可視化 / 細胞画像処理 / 細胞画像解析 / 細胞画像情報処理 / バイオインフォマティクス / ソフトウェア開発 / iPS細胞の品質管理 / iPS細胞のリアルタイム評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は、万能細胞培養過程を丸ごと画像的細胞変化から可視化するTotal Culture Fingerprint法を開発するために、iPS細胞株201B7株を用い、特に(条件I 培養手技の差)について複数の条件を検証した。具体的にはこれまで経験的には重要だとされながらも一度も定量評価されたことがなかった「ピペッティングによる物理的ストレスの差」「培地交換頻度と量の差」「コロニークリーニングの有無の差」「Rock阻害剤の添加の有無」に関して、約2万枚の位相差顕微鏡画像(約96経時ポイント)の撮影と画像処理、そして、ここから得られるコロニー形態情報とその変化のプロファイルを取得した。さらに、このような僅かな手技やスキルの差で生まれる品質変化を、4種類の未分化・分化マーカーで最終的には免疫染色し、これを定量評価した結果を蓄積した。解析の結果、わずかな手技の差(3条件ともに)は、コロニーの形態変化(特にテクスチャ情報の変化)とその増殖率の変化として現れることがわかったため、これを同時に表現できる新規可視化法として、描画のための各種条件の最適化後、Total Culture Fingerprint法アルゴリズムとして完成させることに成功した。この図示法は、細胞の形、増殖率を全て同じ図の中に変化量として表現することができ、大量のコロニーの形状評価として様々な条件の比較が定量的に行える技術となった。この技術によって、これまでは別々な情報かつ「バルク=ヘテロ性のわからないひとまとめの情報」であったiPSコロニーの培養中の変化を、両方合わせながら評価可能かつ、集団の中に現れるヘテロ性の評価が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、実験目標として第一に培養手技というスキルの数値化に挑戦することが目標であったが、この目標となる条件において3つの条件を各数千枚の画像データと、免疫染色による画像撮影後の品質情報とリンクさせることによって、リアルタイムの観測評価によって得られる動的な情報として形態変化と増殖率という2つの重要なパラメータに可視化法を絞り込むことができ、これを実践できたので、自己評価として充分に当初の目標に達成できていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、昨年度に確立した「可視化法」の感度と精度を、iPS細胞の実用化や周辺培養技術の最適化に必要不可欠でありながらこれまでに定量比較評価されたことのない実験項目で評価し、そのロバスト性を科学的な発見の有無について、理解を深める予定である。実験としては、実験条件をII:プロトコルのもっとデリケートな差、III:フィーダー細胞や培地ロットという細胞環境の差を比較する。構築された上記Total Culture Fingerprint法を用いて、これらの条件と定量的に比較し、何がスキルとしてiPS細胞培養の中でクリティカルなパラメータであるか、または、何がiPS細胞培養で品質を安定化させるのに寄与しているかを、特定したいと考えている。ただし、これらの検証を行うためには昨年度に開発した解析技術を、改めて起こし直した新しいロットによって検証する必要があり、どこまで「同一性」が評価できるかは本年の課題でもある。また平成26年度に明確となったのは、僅かな差を検出・評価しようとするときには「画像から得られる数値化パラメータ」のうち、より「ロバストな変数」の決定が解析方法としての安定性にもつながるという発見であった。裏返せばこのような画像から得られるパラメータの中で、より有効かつ安定な情報を解析的に絞込むことができれば、汎用性の高い解析法となる。このような解析には、機械学習を含めた変数選択法の導入が有効であるため、次年度の研究ではiPS細胞コロニーを規定する様々な学習パラメータデータの中のパラメータの組み合わせルールの抽出も行う予定である。最終目標としては、手技によって変化したコロニーを画像で評価・定量化し、同時に画像撮影後に品質評価した結果と突き合わせを行うことによって、開発したTotal Culture Fingerprint法アルゴリズムの実同性を検証する予定である。
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Research Products
(10 results)