2014 Fiscal Year Research-status Report
立方晶窒化ホウ素を材料に用いた電界放出型電子源の性能評価
Project/Area Number |
26630444
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 直嗣 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40380711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 恭志 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発本部, 主任研究員 (20415920)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 推進・エンジン / 電子源 / 電界放出型カソード / 立方晶窒化ホウ素 / 航空宇宙工学 / 半導体物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
テザー推進やイオンエンジンシステムに必要不可欠である新型の電子源として,作動ガスが不要で,高効率かつ長寿命であり,また,低軌道の原子状酸素が存在する環境でも劣化が少ないと期待される立方晶窒化ホウ素(cBN)をエミッタ材料とした電界放出型カソードを開発するために,電極形状やcBN薄膜の特性を変化させて最終目標である一平方センチメートルあたり0.5 mAの引き出せるよう性能向上を目指した.さらに実用化に向けて必要不可欠な耐原子状酸素性の検証を行った. 高品質立方晶窒化ホウ素薄膜を用いた電界放出型電子源において,耐原子状酸素性を評価した.原子状酸素源として,九州工業大学宇宙環境技術ラボラトリーの原子状酸素環境・耐宇宙環境性能評価装置で行った.その結果,200日程度低軌道でさらされるのに相当する原子状酸素フルーエンスでは引き出し性能の低下は見られず,また電子顕微鏡による観察においても特段の変化も見られず,エネルギー分散型X線分光法の結果においても,酸素原子分布は原子状酸素未照射の薄膜と変わりなかった. また,昨年度使用したものよりもcBN存在比が高く,膜厚の厚い高品質の薄膜を用いて引き出し実験を行い,最大引き出し電流として,107 マイクロアンペアの電流の引き出しに成功し,これは,電流密度では,1平方センチメートル当たり0.55 mAと最終目標である,1平方センチメートル当たり0.5 mAを超える性能である.十分な引き出し性能を示せたため,耐久試験およびプラズマ環境下での電子放出実験を行うための準備が出来た.しかしながら,異常放電等の問題が解決できず,電極の再設計が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた耐原子状酸素性を示すと共に,来年度の達成を目指した引き出し電流密度1平方センチメートル当たり0.5 mAを上回る1平方センチメートル当たり0.55 mAを到達したため.
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Strategy for Future Research Activity |
立方晶窒化ホウ素を材料に用いた電界放出型カソードに関する技術の確立をめざす.そのための耐久試験およびプラズマ環境下での実験を行うと共に,電極の改良を行い,異常放電の抑制および印加電圧の低減を目指す.これらの目処が立った後にイオンエンジンシステムに組み込み,システムとしての作動を確認する.上記の問題が解決し,実用化の目処が立ち次第,小型衛星を用いた実機試験への移行を目指す. 低軌道宇宙空間にはプラズマが存在し,宇宙機と宇宙空間には電位差が生じる.これにより引き出し性能にどの程度影響を及ぼすのかを調査するために,低軌道宇宙空間を模擬したプラズマ中に電子源を設置し,電子の引き出しを行い,プラズマ中に放出される電子電流を計測するとともに,プラズマ条件による電子引き出し性能の差異を計測するとともに,周りのプラズマに及ぼす影響をラングミュアプローブにより計測する.また,複数のシールドおよび引き出し電極を用いて,異常放電の起きにくい形状を模索する. また,耐久試験として,実際に1500時間を目標に引き出し実験を行う.現在クーロン力および内部応力による電極間距離の変動がみられ,これが異常放電を引き起こしている.そこで数値解析より得られた最適な電極を用いて再度引き出し実験を行い,最適な電極形状を模索する.プラズマ中での引き出しおよび1500時間程度の耐久性を実証した後,適用候補であるイオンエンジンシステムにcBN電界放出型カソードを組み込み,システム全体の評価を行う.イオンエンジンシステムとして作動するかどうかを確認する.このときに,システム全体でのエネルギー変換効率や寿命などの性能評価をする.
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Causes of Carryover |
端数が余ってしまったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の電子回路部品の購入に充てる.
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