2014 Fiscal Year Research-status Report
原子力電池用放射線源Po-209の特性・製造に関する基礎研究
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26630483
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西山 潤 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (70512680)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子力電池 / ポロニウム-209 / プルトニウム-238 / 同位体製造 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙や惑星の探査のため通信機器と科学機器を搭載した探査機、特に火星より遠くの惑星探査では太陽光が非常に弱く、これまでPu-238を熱源とする原子力電池が主電源として利用されてきた。しかしプルトニウムという特殊な同位体のため、世界で供給不足が懸念されている。そこでPu-238の代替燃料として、Po-209に着目し、その製造方法について検証を行った。 平成26年度は、Po-209、および副次的に生成される同位体について、2種類生成方法に関して評価を行った。Po-209の生成経路は、①Bi-209 (p,n)反応、②Bi-209(n,γ) Bi-210(β崩壊)→Po-210(n,2n)反応の2種類あり、①について陽子加速器を用いた製造方法についてPHITSコードを使用してPo同位体の生成量を計算した。②については、鉛ビスマス共晶合金(LBE)を冷却材とする高速炉を想定し、JENDL, TENDLの核データライブラリを用いて解析的に生成量を評価した。①加速器を使用した製造方法では、40 MeVの加速エネルギーがエネルギー効率において最適であることが分かった。この際、年間1kgのPo-209を製造するのに必要な陽子ビーム電流は14 Aと評価された。一方でPo-208については、Po-209の4倍の量が同時に生成されることが明らかになった。また発熱量を考慮するとPo-209と同等の発熱量のPo-208を製造するのに0.13 Aとなり、比較的に製造しやすいことが分かった。ただしPo-208は半減期が約3年であり、利用分野については検討が必要である。②の原子炉を用いた製造方法については、平均的な原子炉出力を仮定すると年間数g程度の生成量となった。特に2回目の核反応Po-210(n,2n)がボトルネックとなっており、この解決にはより高い中性子エネルギーが必要となる。そこで加速器駆動未臨界炉、核融合炉とのハイブリッド炉などでの生成量評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度について、当初予定していた(1)Po-209、および副次的に生成される同位体の特性評価、(2)生成経路・方法による生成量、副次的に生成される同位元素の量のエネルギー特性評価についておおむね予定通り実施できている。(2)に関して、当初計画していなかった核融合炉からの中性子を利用する製造方法について検討することにしたが平成27年度に評価を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、(1)原子炉を使用した製造方法の詳細計算、(2)評価済み核データライブラリの評価・検討、(3)製造方法検証実験に必要な基礎データの整備を行う。 (1)については、現状で解析的な評価で明らかになったことを基礎として、モンテカルロシミュレーションによる原子炉での中性子輸送計算を実施して、Po同位体の生成量をより正確に評価する。(2)について、生成量が核反応の起こりやすさである核反応断面積に依存しており、核反応によっては、2~3倍の差のある測定値が報告されている。本研究では、データライブラリの違いによるPo-209生成量、その他同位体の生成量の差異を明らかにするとともに、測定値が存在しないPo-210 (n,2n)Po-209反応に関しては、核反応計算コードにより断面積評価を行う。そして、今後核反応断面積の測定で重要になるエネルギー、核反応について明示する。(3)これまで研究で得られた成果を基に、Po-209の製造方法検証のための実験に必要となるデータを明らかにし、より精度の必要な核反応断面積についての測定、生成量評価のための製造実験について、放射線の発生量、放射能の生成量評価を含めた実験計画を策定する。
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Causes of Carryover |
26年度購入予定であったラックマウントサーバーのスペックを下げ、代わりにスーパーコンピュータTSUBAMEの使用量を増加させた。TSUBAMEの使用料金に関しては27年1-3月期に使用した分については翌年度会計処理が実施されるため26年度分の使用額として差が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度1-3月期のTSUBAME使用料金に充てるとともに、新たに追加計算を平成27年度もTSUBAMEで実施するための使用料金に充てる。
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Research Products
(2 results)