2014 Fiscal Year Research-status Report
3Dプリンタを用いたシンチレーション式放射線検出器製造の検討
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26630485
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金 政浩 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80450310)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シンチレータ / UV硬化樹脂 / 3Dプリンタ |
Outline of Annual Research Achievements |
3Dプリンタを用いた放射線検出用シンチレータ作成を目標として、以下の開発を行った。 まず、3Dプリンタに用いられる造形剤はUV硬化樹脂である。本年度は3DプリンタMiiCraftを導入し、純正のUV硬化樹脂に発光剤と波長変換剤を溶解させ、それを用いた造形物がシンチレータとして動作するか確認を行った。 使用した発光剤および波長変換剤は液体シンチレータによく用いられる、PPOおよびDMPOPOPを採用した。MiiCraft純正のUV硬化樹脂は高めの粘度に調整されているため、PPOおよびDMPOPOPを均一に混合する方法を検討した。UV硬化樹脂およびPPOの両方はエタノールによく溶けるため、一度PPOをエタノールに溶解させた後に、UV硬化樹脂と混合し、よく撹拌することで上記を達成した。この改良UV硬化樹脂を用いて、MiiCraftによる造形を行い、シンチレータを作成した。 作成したシンチレータは、光電子増倍管とオプティカルグリスで接続し、ベータ線およびガンマ線で照射することで得られる波高スペクトルを測定し、性能を評価した。その結果、線源の有無によって、明らかに発光している事が確認された。しかし、DMPOPOPはエタノール、UV硬化樹脂にも微量しか溶解しなかったためか、波長変換剤の有無による性能の差は限定的であった。また、ガンマ線源にはCo-60およびCs-137の2種類を用いたが、ガンマ線エネルギーの高いCo-60の方が高い波高が得られており、エネルギーに依存した発光量となっていることも確認した。ただし、いずれも明確なコンプトン端は観測されなかった。 これは、作成したシンチレータの減衰長が約2cmと短いためと考えられる。次年度は、純正のUV硬化樹脂ではなく、透明度が高く、放射線のエネルギーを効率的に受けられるパイ電子の多いUV硬化樹脂を新たに開発することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
良い成果を迅速に出すため、初年度から3Dプリンタを購入する方針に変更した。そのため、3Dプリンタによるシンチレータの造形まで達成することができた。しかしながら、純正のUV硬化樹脂を用いることの限界も認識できたため、次年度以降はゼロから独自にUV硬化樹脂を開発する方向に研究を展開する。 これらを総合的に考えると、予定より早く進んだ部分と抽出された問題を解決する部分で相殺され、おおむね当初計画通り、2年間で研究が完了するペースになっていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、純正のUV硬化樹脂を用いた場合、減衰長が短く、シンチレータとして用いるのには限界があることがわかった。今後は、東亞合成株式会社のアロニックスなどのうち透明度が高い物をベースにゼロから3Dプリンタ用のUV硬化樹脂を開発する。また、純正のUV硬化樹脂はアクリル系であり、パイ電子の少ない構造であった。シンチレータとして用いる場合、パイ電子が多く含まれる溶媒が有利である。アロニックスシリーズの中には、ベンゼン環を多く含むUV硬化樹脂も存在しており、昨年度までの結果を大きく改善できる可能性もある。光開始剤や粘度調整剤の組み合わせも最適化し、研究期間終了までにシンチレータとして用いることのできるUV硬化樹脂の開発を行う予定である。
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Causes of Carryover |
概ね研究計画に従った研究費の執行を行った。3Dプリンタを前倒しして購入したが、液体シンチレータの容器を作成する計画を削除することで対応ができた。また、削除した研究は補助的な内容であったため、これによって想定される成果に大きな影響が生じることはない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、ゼロからUV硬化樹脂を開発する方針に変更したため、様々な種類の樹脂や光開始剤、粘度調整剤を選別する必要がある。その購入に充てる。
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Remarks |
学会発表前なので、詳しい情報は未記載。発表後に追記予定。
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