2014 Fiscal Year Research-status Report
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26630488
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
馬場 祐治 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島事業管理部, 嘱託 (90360403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 巌 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10425572)
平尾 法恵 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 技術開発協力員 (30600027)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルカリ金属 / 吸着 / セシウム / X線光電子分光法 / 酸化物 / 全反射 / 放射光 / 極微量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射性セシウム(Cs)の原子数に相当する極微量のCsおよび他のアルカリ金属の吸着状態を、放射光X線を使った分光学的手法で直接観測して明らかにすることを目的としている。初年度である平成26年度は、極微量元素の吸着状態を測定するための全反射X線光電子分光法に関する検討を行うとともに、土壌や粘土鉱物を構成する主要成分である二酸化ケイ素(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)表面に吸着した極微量Csの吸着状態を調べ、以下の結果を得た。 1.SiO2およびAl2O3について、集光した放射光X線ビームを表面すれすれの0.5度以下の入射角で照射することにより、全反射条件下でX線光電子分光法測定が可能であることがわかった。全反射条件では光電子スペクトルのCs 3dピーク領域のバックグラウンドが10分の1以下に低下し、これにより、SiO2表面に吸着したCsについて、1 cm2あたり200ピコグラムまでの極微量セシウムの光電子分光測定が可能となった。この原子数は、半減期30年のCs-137に換算すると400ベクレルに相当する。このことから、全反射X線光電子分光法により、放射性Csの原子数に匹敵する極微量Csの結合状態を直接観察することが可能となった。 2.SiO2およびAl2O3表面に吸着したCsについて、全反射X線光電子分光法により吸着したCsの化学結合状態を調べた。吸着量が多い場合、Cs 3dピークのエネルギーは、吸着層の厚みや吸着方法によらず一定であり、Csは基板表面と弱い結合(ファン・デア・ワールス結合)で吸着していることがわかった。一方、吸着量が1 cm2あたり200ピコグラム以下の極微量Csでは、Cs 3dピークは0.8 eV高エネルギー側にシフトした。このことから極微量Csは、分極が小さい(共有結合に近い)状態で表面に結合していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成26年度では、下記の2点について検討することを計画した。 (1)極微量のアルカリ金属の吸着状態を明らかにするための全反射X線光電子分光法を確立する。 (2)上記手法により、溶液法及び真空蒸着法により酸化物表面に吸着した極微量Csの化学結合状態を明らかにする。 (1)に関しては、X線の全反射条件においてX線光電子分光測定の最適な条件を見出した。従来の方法では1 cm2あたりナノグラムオーダー以上の吸着量がないと光電子分光測定ができなかったが、全反射条件で測定を行うことにより、400ベクレルのCs-137の原子数に相当する1 cm2あたり200ピコグラムまでの極微量セシウムのX線光電子分光測定が可能となった。これにより、放射性Csの原子数に匹敵する極微量のCsの結合状態観察が可能であることを実証できた。(2)に関しては、吸着量が多い場合、吸着方法や吸着量によらずCsは酸化物表面と弱い結合(ファン・デア・ワールス結合)で吸着しているのに対し、極微量Csの場合は、分極が小さい(共有結合に近い)状態で表面に結合していることを明らかにできた。以上のことから、本研究は当初計画どおり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も当初計画通りに研究を進める。特に、粘土鉱物の主要成分である層状酸化物(マイカ)における極微量アルカリ金属の吸着状態について詳細に検討する。また将来の放射性Csの除染作業を想定し、次の操作によりCsを脱離させることを試み、その際の吸着量及び化学結合状態の変化を全反射X線光電子分光法により調べる。 1.湿式法:水や酸などの溶液で除染することを想定し、Csを吸着させた酸化物試料を、水または1モルの塩酸に1日浸し乾燥させたのち、吸着量及び化学結合状態の変化を測定する。また超音波洗浄など、より脱離しやすい条件を探索する。 2.乾式法:汚染土を真空中で加熱してCsを脱離させることを想定し、セシウムを吸着させた酸化物試料を真空中で800℃程度まで加熱し、吸着量及び化学結合状態の変化を測定する。乾式法による脱離条件の検討は、別途、質量分析装置を用いた昇温脱離法により行う。 以上の結果に基づき、極微量のCsと酸化物間の化学結合状態および脱離挙動を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初は平成26年度に、全反射X線光電子分光法による極微量アルカリ金属の測定法を確立するため、放射光X線ビームを集光するための装置・備品に予算の一部を充てる計画であったが、放射光X線ビームの集光については、ビームラインのミラー、モノクロメータなどの集光系および試料位置調整に係る別予算で行うことができた。また調査および成果の発表に係る2件の国際会議が、国内および韓国で開催されたため、出張旅費が少なくてすんだ。これらの予算は平成27年度に極微量Csの脱離実験を行うための測定試料と、脱離実験に係る加熱装置の整備および研究成果の公表に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、Cs以外の他のアルカリ金属の吸着状態に関する研究、層状酸化物(マイカ)における極微量Csの吸着状態についても検討する。また将来の放射性セシウムの除染作業を想定し、吸着したセシウムを湿式法および乾式法で脱離させることを試み、その際の吸着量及び化学結合状態の変化を全反射X線光電子分光法により調べる。予算はそのための試料および加熱装置の整備に充てる。また研究成果を米国での国際会議(環太平洋国際化学会議など)で発表するための出張旅費に充てる。
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[Journal Article] Contracted Interlayer Distance in Graphene/Sapphire Heterostructure2015
Author(s)
S. Entani, P. B. Sorokin, P. V. Avramov, M. Ohtomo, Y. Matsumoto, L. Yu. Antipina, N. Hirao, I. Shimoyama, H. Naramoto, Y. Baba, S. Sakai
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Journal Title
Nano Research
Volume: 8
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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