2014 Fiscal Year Research-status Report
トポタクティックな酸素の脱挿入を正極反応として利用したマグネシウム電池の開発
Project/Area Number |
26630493
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日比野 光宏 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 上席研究員 (20270910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 哲孝 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50181904)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 二次電池 / マグネシウム電池 / 正極材料 / ペロブスカイト型酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は鉄系ペロブスカイト型酸化物SrFeO3を正極としたマグネシウム電池を作製した.まずセル構成を確立し,正極での反応について詳細に調べた.電解液については,過塩素酸マグネシウムの炭酸プロピレン溶液を用いることで正極活物質の還元反応(放電反応)が進行し,ブランク試験から副反応もないことが明らかとなった.負極におけるマグネシウム溶解析出反応には大きな過電圧が必要となったが,大面積マグネシウムを使用することで低減できたことから,この電解液を用いた充放電が可能となり正極反応の詳細な解析が可能となった. 深度(電気量)を変えて放電試験を行い,正極の結晶構造変化を調べた.ペロブスカイト相(P相)とブラウンミラーライト相(BM相)の二相共存状態で反応が進む領域では,XRDプロファイルのリートベルト解析からP相とBM相の含有比を決定した.P相中の鉄の価数を既報データを基に格子定数から決定し,BM相中の鉄は3価として,放電過程における正極中の鉄の平均価数の推移を調べた.得られた電気量と鉄の平均価数の関係を基に反応を検討した結果,放電初期にはMgO2が生成し,その後MgOが生成することが示唆された.また,MgOが生成するほどの深い放電を行った場合には充電反応は進行せず,MgO2生成までで止めた場合には充電可能であった.化学式当たりの移動電子数で表わした移動電荷数n = 0.5までであれば充放電可能であったことから,(SrFeO3ではn = 1で140 mAh/gの理論容量であるので)正極容量70 mAh/gのマグネシウム2次電池として期待できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はトポタクティックな酸素脱挿入が可能なペロブスカイト構造の金属酸化物を正極とする新しい方式のマグネシウム電池を提案・実証することを目的としている.この電池は正極から引き抜かれた酸素と電解質中のマグネシウムによって,正極-電解質界面にマグネシウム酸化物が生成する反応を放電反応として利用し,3V級の起電力が期待でき,また拡散の遅いマグネシウムインターカレーション材料を用いないですむため,高出力型電池への発展も期待できる.この当初の目的通り,ペロブスカイト構造のSrFeO3からトポタクティックに引き抜かれた酸素とマグネシウムイオンからの過酸化マグネシウム生成反応が放電反応として利用できること,また可逆に充電できることが26年度に明らかとなっている.したがって,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,26年度には電極の熱力学的状態を基にした通電電気量と電位の関係の解析,および活物質の結晶構造と鉄の平均価数を詳細に調べることでSrFeO3を正極とした場合の反応経路がほぼ明らかになった.27年度にはSrFeO3正極における条件を基にすることで,正極の充放電特性を調べるためのセル形状,電極作製法などの諸条件を決定し,サイクル特性,負荷特性を調べる.サイクル過程での電極中の成分分析などによりサイクルを繰り返したときのメカニズムを調べ,必要に応じて,電極形態,セル形状などを改善する.また,3V級の起電力を得るための適切な電解質選択の検討も継続して行う.その上で容量,出力,サイクル性など本電池の性能上の特徴を明らかにする.同時に高性能化につなげるための指針を得ることを目標とする.
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