2014 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュを用いた聴覚情景分析の神経回路基盤の研究
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26640010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷本 昌志 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30608716)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 聴覚 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脊椎動物の聴覚の代表的な機能のひとつである聴覚情景分析の神経回路基盤を明らかにするために、ゼブラフィッシュを新たなモデルとして確立することを目的として、聴覚系の形態学的および生理学的解析を行った。 (1)聴覚回路の生理・形態学的解析 我々はこれまでに魚類の聴覚器官である内耳の耳石器官のうち、ゼブラフィッシュ仔魚において吻側の卵形嚢は平衡感覚に重要な役割を果たす一方で、尾側の球形嚢は聴覚に重要な役割を果たすことを見出していた。本研究では、聴覚情報を脳へ伝達する聴神経節細胞の単一神経細胞の細胞外活動電位をloose-patch clamp法で記録する手法を初めて確立し、球形嚢から感覚入力を受ける聴神経節細胞が音刺激に応じて発火周波数を増加させる一方で、卵形嚢からの聴神経節細胞は顕著な応答を示さないことを明らかにした。さらに、両者の軸索投射パターンを蛍光標識して調べ、ともに菱脳背側の菱脳第1分節から第7分節の範囲に投射することを明らかにした。 (2)神経活動の光学的計測法 活動電位を高い時間分解能で光学的に計測するために、遺伝子コード型膜電位感受性プローブ蛍光タンパク質Accelerated sensor of action potentials 1(ASAP1)をGal4-UASシステムで発現する遺伝子組換えゼブラフィッシュを作製した。性能評価実験として脊髄ニューロンにASAP1を発現する遺伝子組換え仔魚に運動を誘発する感覚刺激を与えると、10%程度の蛍光強度の変化が記録され、神経活動計測の有効な手法となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経回路の形態・生理学的解析は概ね順調に進捗したが、これに多くの時間を費やし、光学計測法や行動学的実験系の確立がやや遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
脳組織の透明度が高く光学的解析に適したゼブラフィッシュ仔魚の利点を生かし、ひきつづき光学計測や形態・生理学的解析を進める。
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Causes of Carryover |
本研究では脳神経ネットワークの情報処理機構の一端を理解するためにゼブラフィッシュ脳神経活動を計測操作する新たな実験系の立ち上げを推進してきた。その過程で神経活動の光学的計測プローブ分子の中で最近報告されたものを用いることで、良好なデータを得られる見通しが立った一方で、光学系のさらなる改良を検討する必要があることが判明した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光学系を改良し、仕様の検討が完了していない光学機器の購入費用、遺伝子組換え魚の飼育維持費用、および飼育のための研究支援者の雇用費に充てる。
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Research Products
(2 results)