2014 Fiscal Year Research-status Report
Role of Axonal BK channel in Cerebellar Purkinje Cells
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26640017
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
御園生 裕明 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (40609509)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軸索 / 活動電位 / 小脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々が独自に発見したBKチャネルの新しい軸索内局在に基づき、この軸索BKチャ ネルの生理的役割を明らかにし、軸索における新しい情報処理の可能性について探求することを目的としている。 平成26年度は、小脳プルキンエ細胞軸索におけるBKチャネルの役割を明らかにすることを目指し、スライスを用いた電気生理学実験を行った。プルキンエ細胞は高頻度で自発発火を行い、軸索も高頻度の活動電位を忠実に伝えることが報告されている。一方BKチャネルは、非常に速い開口速度を持ち、活動電位後の再分極を促進すると考えられている。以上のことから我々は、新規に見出した軸索BKチャネルが、軸索内での活動電位の高頻度発火を助け、伝搬の忠実性を支持していると仮説し、その検証を行った。 プルキンエ細胞軸索を電気刺激して軸索内で活動電位を発生させ、細胞体から逆行性活動電位を記録することで、軸索内活動伝搬を解析した。この時、BKチャネル阻害剤を軸索に局所投与することにより、BKチャネルの役割を明らかにすることを試みた。その結果、BKチャネルを阻害すると、活動電位のfailure rateが増大し、軸索内活動電位伝搬の忠実性が顕著に減少することが明らかになった。また、カルシウムなしの細胞外液や、電位依存性カルシウムチャネル阻害剤であるニッケルにより同様の忠実性の減少がみられたことから、特定のカルシウムチャネルが軸索ランビエ絞輪付近に局在しており、活動電位に伴ってカルシウムを軸索内に流入させることが示唆された。さらに、軸索BKチャネルを阻害すると、プルキンエ細胞ー小脳核細胞間のシナプス伝達が抑制されることから、軸索BKチャネルによって活動電位伝搬の忠実性が担保され、ひいては小脳皮質の唯一の出力である、プルキンエ細胞のシナプス伝達の効率が保たれていることが示唆される。以上の結果はJournal of Neuroscienceに発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究計画として、 (1)軸索 BK チャネルによる活動電位伝搬の制御。小脳スライスを用いて、プルキンエ細胞軸 索から細胞外記録で活動電位を記録する。細胞体電極より活動電位を誘起し、軸索途中のランビ エ絞輪付近で BK チャネルを阻害した場合に、活動電位に生じる変化について検討する。 (2)軸索内カルシウム変動の検討とそのメカニズム。カルシウムイメージングと電気生理学記録を用いて、 軸索内カルシウム変動の定量的解析を行い、そのメカニズムについて明らかにする。 (3)軸索における活動電位の可塑性。グルタミン酸や他のグリオトランスミッターが軸索の活動電位にどのような影響を与えるのか、その制御にBK チャネルが関与するのかについて検討する。 の3つを提案した。現在のところ研究計画(1)はほぼ終了し、論文として成果を報告している。(2)については、電気生理学を用いてカルシウムチャネルを特定する作業が進んでおり、結果の一部は上述の論文で報告した。以上のことから、研究の目的はおおむね順調に達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、BKチャネルが軸索における活動電位発火の忠実性に関わることを明らかにしたが、BKチャネルがどのように活動電位を制御しているかというメカニズムについては不明である。軸索からパッチクランプ記録をすることができればある程度の検討は可能であるが、成熟動物のスライスで、ミエリン化された軸索から記録することは非常に難しく、断念した。一方、培養小脳スライスにおいて、ミエリン化やイオンチャネルの局在化が再現できるという研究が、最近いくつか報告されている。培養スライスでは、通常のスライス標本に比べて、プルキンエ細胞の長い軸索が切れずに保たれているので、軸索からの記録が比較的容易になると考えられる。そこで、今後はこのような小脳スライス培養を取り入れることを計画している。 またメカニズムを探る代替手段として、コンピュータ・シミュレーションが考えられるが、現時点ではイオンチャネルの種類や密度などの必要な情報が不十分である。そこで、オーストリアISTの重本研究室と共同研究を行い、SDS処理凍結割断レプリカ標識法を用いて、BKチャネルやカルシウムチャネルの同定と密度の定量を行うことを計画している。これらの情報が明らかになれば、より現実に即したプルキンエ細胞軸索のモデルが構築でき、BKチャネルおよびカルシウムチャネルによる軸索内活動電位制御のメカニズムが検討できるようになる。
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Causes of Carryover |
学内経費により共通の消耗品(電極や試薬)および動物の購入を行うことができたこと、また交付額では初年度予算に申請していた機器類の購入ができなかったことから、使用額は当初の予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、申請額および繰越し金(計1,934,894円)について以下のような使用を計画している。(1)実験用試薬:300,000円、(2)実験用消耗品:100,000円、(3)培養用試薬:300,000円、(4)実験動物:300,000円、(5)外国旅費:300,000円、(6)培養用小型インキュベータ:500,000円、(7)その他消耗品:134,894円 今後スライス培養を計画しているため培養用の試薬および実験動物を計上し、培養用のインキュベータを購入予定である。また、成果を国際学会に発表するための旅費を計画している。
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