2015 Fiscal Year Research-status Report
フェロモン感知ニューロンにおける温度感知とそれらの情報の識別
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26640018
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 准教授 (00402412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C. elegans / 区別識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞において複数の情報が神経細胞内でどのようにして区別やクロストークされるかを解析することは重要であると考えられる。これまでに多くの動物において、神経情報の区別が解析されてきたが、未知の点も多数残っている。本研究では、線虫C. elegansのシンプルな神経系をつかい、神経情報の識別に関わる情報処理機構を詳しく解析する。我々はこれまでに、線虫の温度に対する走性行動を実験系として、単一の感覚ニューロンが2つ以上の 情報を感知し、区別識別しているケースを線虫の解析から明らかにした。本研究では、よりシンプルに行動に頼らずに複数の神経情報処理を解析できる実験系を確立するための解析を行った。その結果、従来線虫において耐性幼虫からのリカバリーや光受容に関与することが知られていた感覚ニューロンが温度も感知することが明らかとなった。本年度は、このニューロン内におけるフェロモンや光の情報伝達に関わる、複数の3量体Gタンパク質に注目し、それらの機能代償性や複数の感覚刺激の受容における使い分けを調べた。具体的には、2重、3重変異体を作成し、それらの当概感覚ニューロンにおける温度応答性をカルシウムイメージングで測定した。プローブとしてgenetically encodable Ca2+インディケーター(Yellow cameleon)をもちいた。その結果、単一の感覚ニューロンにおいて、感覚刺激の種類に応じて、Gタンパク質やグアニル酸シクラーゼが使い分けられている可能性が示唆された。また、個体レベルでの温度応答適応でも代償性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した実施計画をおおかた進められたと考えられる。分子遺伝学と神経活動のカルシウムイメージングを組み合わせた解析の結果、これらのフェロモンや光の情報伝達に関わる複数の3量体Gタンパク質分子が温度情報伝達にも関与し、それらの分子が代償的に働くことが示唆された。さらに、これらの複数の3量体Gタンパク質の変異体が、個体レベルでの温度応答適応にも代償的に異常をもつことが明らかとなった。また、昨年に引き続き、温度で発現変動する遺伝子を単離した後に、線虫遺伝子データベースなどから感覚神経系で機能すると考えられる遺伝子に関して、C. elegansのRNAi用の凍結大腸菌ライブラリーをもちいて、遺伝子をノックダウンする解析やノックアウト変異体をもちた解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
線虫においてフェロモン受容ニューロン内の温度情報伝達に関わる分子として、cGMP依存性チャネル、Gαタンパク質、グアニル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼが昨年度までに見つかっていた。昨年度は、特にGαタンパク質の多重変異体について焦点を当てて解析を行ったため、Gαタンパク質の下流分子についても、カルシウムイメージングにより、多重変異体における当概感覚ニューロンの温度応答性を定量化する。特にホスホジエステラーゼは、当概感覚ニューロンの温度以外の感覚情報伝達に関わるものとして4つが考えられているため、それらについて様々な組合せの多重変異体を用いて、カルシウムイメージングにより温度に対する応答性を測定する。すでに分かっているフェロモンや光の情報伝達に関わるホスホジエステラーゼと比較して、温度情報伝達との差分を見つけることで複数の感覚情報の区別識別に関わる分子と生理的暗号が見つかると考えられる。また、昨年度の遺伝子スクリーニングを継続する。
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Research Products
(13 results)