2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26640019
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉村 由美子 生理学研究所, 生体情報研究系, 教授 (10291907)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大脳皮質視覚野 / 微小神経回路 / 方位選択性コラム |
Outline of Annual Research Achievements |
高い視覚機能を持つ哺乳類の一次視覚野では、類似した視覚反応選択性を持つニューロンが集まって機能コラムを形成しているが、機能コラムの中の神経回路構成については不明な点が多い。私はこれまでに、ラット視覚野切片標本を用いてその神経回路を電気生理学的に解析し、近接する2/3層錐体細胞(興奮性細胞)はその間にシナプス結合があると、近傍の他の細胞からの興奮性入力を共有していることを発見し、微小神経回路が視覚野内に埋め込まれていることを報告した。この微小神経回路網は、情報処理の基本単位と考えられるが、ラットは機能コラムを有しないため、コラムとの対応関係やコラムよりさらに小さい情報処理単位であるかは不明である。本研究では、コラム構造を持つネコを対象とし、まずin vivo光学測定法により方位選択性コラムを同定し、その後その個体から作製した視覚野切片標本において方位選択性コラムの中心にある2/3層錐体細胞間の神経結合を解析した。その結果、方位選択性コラム内で神経結合する2/3層錐体細胞ペアは、同じコラムに属する他の興奮性細胞からの共通入力を高い割合で受けていることを見出した。一方、神経結合を形成しない錐体細胞ペアにおいても一定の割合で共通入力が観察されたが、その割合は神経結合するペアと比して低かった。以上の結果は、微小神経回路網は機能コラム構造の中に埋め込まれていることを示しており、微小神経回路がコラムの中に構成されている最小の情報処理単位であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚野コラム構造のマッピングの最適化に時間がかかったが、その後は順調に進展し、コラム構造の中に微小神経回路網が構築されている結果を得た。本計画で使用する微小神経回路網の同定手法はデータ取得後の解析に時間がかかるため、まだ一部のデータについては解析が終了していないが、7月までには終了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により大脳皮質視覚野の機能コラムの中に微小神経回路網が構築されている結果を得たので、今後はこの研究を発展させ、個々の視覚野細胞の視覚反応選択性と微小神経回路網を対応付ける解析を行う。視覚対象は方位だけでなく複数のパラメータで特徴づけられる。一次視覚野は、見ている物体の方位のみを検出しているのではなく、そのサイズ、運動方向、速度など他の多くのパラメータも同時に検出している。そのような並列情報処理を効率よく行うには、同じ方位に反応するが最適空間周波数や最適速度は異なるといった、反応選択性の多様なレパートリーを持つニューロン群が必要であり、実際方位コラム内にそのような細胞が存在することが分かっている。そこで、複数の視覚パラメータを対象に、類似した反応選択性を示す視覚野細胞を同定し、そのニューロンペアが形成する神経回路を調べる。このような実験により、大脳皮質の情報処理を担う神経回路基盤の理解を目指す。
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Causes of Carryover |
電気生理学的実験は終了しているが、それらのデータと形態学的に層構造を可視化した結果を併せて、微小神経回路網を同定する解析の一部がまだ終了していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬等の消耗品購入のために使用する。
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Research Products
(1 results)