2014 Fiscal Year Research-status Report
代謝疾患メカニズム解明に向けた、慢性的睡眠不足モデルマウスの開発
Project/Area Number |
26640025
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高田 陽子 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (60435740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ラザルス ミハエル 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (80469650)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性睡眠不足 / モデルマウス / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
不規則かつ長時間の覚醒はエネルギー代謝やホルモン調節に悪影響を与え、生活習慣病のリスクを上昇させることが知られている。本研究課題は、睡眠覚醒系-各代謝系のシステム間ネットワーク解明を目指すための慢性的睡眠不足モデルマウスの開発を主目的とする。さらに、開発したマウスを基に、睡眠不足とエネルギー代謝の関連性を解析する。 平成26年度は研究期間2年のうちの初年度として、慢性的睡眠不足モデルマウスの作製を行った。睡眠覚醒調節に重要な役割を担うことが示唆されている、大脳基底核の一部、側坐核のアデノシンA2A受容体神経をイベルメクチンによって特異的に抑制させて睡眠を阻害する処置をしたマウスの脳波を測定し、睡眠解析をおこなった。睡眠量の減少は見られたものの、慢性的睡眠不足といえる状態には至らなかった。一方、別の研究を進める中で、脳の一部を特異的に損傷させることで、少なくとも1ヶ月、持続的に睡眠量が30 %以上減少するマウスを偶然に見出した。慢性的睡眠不足といえる状態を示すこのマウスをモデルマウスとし、以後の実験を行う。このモデルマウスは、1時間ほどの施術1回で作製できる利点があるが、断眠時間を人為的にコントロールすることができない。また、脳の損傷自体が摂餌量と体重へ影響を与えていることも考えられることから、他の方法による慢性的睡眠不足マウスの作製も引き続き行う。研究期間が残り少ないことから、短期間で作製できる可能性がより高く、本年度作製したモデルマウスとの併用も可能な、脳波を利用した自動断眠装置による慢性的睡眠不足マウスの作製を行う。既に自動断眠装置を購入し、現在は断眠精度の確認と調整を行っている。研究計画に予定していたDREADDによる睡眠阻害措置による慢性的睡眠不足マウスの作製については、既に十分な条件を持つモデルマウスを得ており、研究期間も限られているため実施しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の第一の目的であり、初年度の達成目標である、慢性的睡眠不足モデルマウスを作製できた。このマウスは、少なくとも数週間以上、睡眠量が減少した状態を呈する。睡眠阻害の緻密な人為的コントロールを行うには課題が残るが、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳の一部を損傷させて、慢性的睡眠不足となったマウスの摂餌量と体重を連続して測定し、慢性的睡眠不足が摂餌量と体重へ及ぼす影響を調べる。平行して、慢性的睡眠不足マウスの血液を定期的に採取し、ヒトで睡眠不足との関連性が示されている代謝に係わる成分(グルコース、インスリン、コレステロール、糖化ヘモグロビン、アディポネクチン、レプチン、グレリン、トリグリセリド、C反応性タンパク)を測定し、慢性的睡眠不足が代謝調節に与える影響を調べ、睡眠と代謝調節の関係を分析する。また、研究実績の概要でも述べたとおり、脳波を利用した自動断眠装置による慢性的睡眠不足マウスの作製を行う。具体的には、マウスにとって最も眠い時間帯である明期の初期に睡眠阻害措置を継続して行い、摂餌量と体重、および代謝にかかわる成分を定期的に記録する。
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