2014 Fiscal Year Research-status Report
単一染色体のライブ観察による染色体不安定性の実体解明
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26640067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 耕三 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00304452)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / 細胞・組織 / 染色体不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大部分のがん細胞では染色体数の異常(異数性)が認められ、この背景には細胞分裂時の染色体分配の異常(染色体不安定性)が存在する。しかし染色体分配に明らかな異常があるとそもそも細胞が生存することができないため、染色体不安定性の本態については不明な点が多い。本研究では、正常細胞や染色体不安定性を示すがん細胞において、特定の染色体を蛍光ラベルしてそれが分配される過程を追跡することにより、どのような要因で染色体分配の異常が起こるのかを特定する。また染色体の不均等分配を起こした細胞のそれ以降の挙動を追うことにより、染色体不安定性が成立する過程を解析する。平成26年度は以下のような成果が得られた。 1. 特定の染色体を蛍光ラベルした細胞株の樹立 染色体腕部に256コピーのlacO配列をCRISPR/Casシステムによって挿入するためのベクターを作成し、染色体上の目的の部位に挿入可能であることをPCRによって確認した。またlacO配列が挿入された部位を可視化するためのGFP-LacIを恒常発現するU2OS細胞を樹立した。一方すでに1番染色体にlacO配列が挿入されているU2OS 2-6-3細胞にmCherry-H2B, GFP-LacI, GFP-alpha-tubulinを発現させた細胞を樹立した。 2. 蛍光ラベルした染色体のライブ観察 U2OS 2-6-3細胞より樹立した1番染色体を可視化した細胞でライブ観察を行った。その結果染色体分配の過程を通じて1番染色体の挙動を追跡することができた。一方1)細胞の同調が難しく一度に多数の分裂期の細胞を観察することが困難である、2)lacO部位を示すGFPドットのシグナルをもつ細胞の割合が少ない、3)GFPドットのシグナルが弱く長時間の観察が難しい、などの問題点も明らかになった。そのため、染色体不安定性をchromosome spreadによる染色体数の計測やFISH解析なども併用して評価することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずヒト細胞株でCRISPR/Casシステムにより染色体上の任意の部位にlacO配列を組み込む方法を樹立することができた。またlacO配列を有する細胞にGFP-LacI, mCherry-H2B, GFP-alpha-tubulinを発現させることによって、GFPドット, 染色体, 紡錘体を同時にリアルタイム観察し、特定の染色体の挙動を追跡することが可能であることもわかった。一方当初の計画のように多数の細胞について特定の染色体の追跡を行い、染色体分配異常の出現頻度を定量的に評価するのは現状では難しいことも判明した。しかし染色体分配異常の出現頻度についてはchromosome spreadによる染色体数の計測やFISH解析について定量的に評価し、染色体分配異常の原因については単一の染色体の挙動を観察することによって質的に評価することでこの問題点は克服できるものと考えられる。すでにchromosome spreadによって染色体数を評価する手法を確立している。以上より、染色体不安定性を定量的・定性的に評価することを目的とした本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、平成26年度に引き続いて単一の染色体の挙動を追跡する手法を樹立する。それと共に、chromosome spread, FISH解析により多数の細胞を解析し、染色体不安定性を定量的に評価する系を確立する。これらの手法を用いて、染色体整列の過程に関与する分子の発現を正常細胞でRNAiにより抑制し、不均等分配の頻度が上昇するかどうかを検討する。染色体不安定性への関与が明らかになった分子については、染色体不安定性を示す細胞での発現量を調べ、もし低下している場合には強制発現させて染色体不安定性が改善するかどうかを検討する。また長時間のライブ観察を行うことにより、不均等分配を起こした細胞を追跡し、このような細胞がさらなる不均等分配を起こしやすいのか、増殖速度が変化するのかを検討する。また多数の細胞を観察することにより、不均等分配を契機に染色体不安定性および増殖能を獲得する細胞が出現するかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
理由 効率的に実験を行った結果、予想よりも物品費を抑えることができた。また単一染色体を可視化した細胞を用いた大規模な測定が困難であることが判明し、他の方法の検討を行ったため、予定していた実験を行う費用が生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画 単一染色体を可視化した細胞株の樹立を予定通り進行させ、染色体分配異常の質的な解析を行う。これと並行してchromosome spreadやFISH解析による染色体分配異常の定量的な評価法を確立する。これらの手法を用いて、染色体安定性への関与が予想される種々の分子をノックダウンした場合の染色体不安定性の出現について検討する。
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Research Products
(11 results)