2014 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の集団的移動と多様性を確立する分子機構の解明
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26640074
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 琢哉 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00551970) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がんの集団的移動 / TRIM27 / MRTFB / インテグリンベータ1 / マイクロRNA124 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんが浸潤する際には隣の細胞との接着を失うことが重要と考えられている。近年になって、がん組織の観察やがん細胞のライブイメージングの結果から、がん細胞同士が強固に接着し、集団を保ったまま浸潤し得ることが明らかになり、がん細胞の集団的浸潤として注目を集めている。がん細胞の集団的浸潤では、集団の先頭を進む先導細胞(leading cells: LCs)と後続細胞(following cells: FCs)の2 種類の細胞が生じ、効率的な浸潤に寄与していると考えられている。しかし、がん細胞の集団がどのようなメカニズムでこれらの細胞を生み出すのかは明らかになっていない。われわれはLCs において細胞運動関連分子であるインテグリンベータ1の発現が高いことに着目し、その発現を制御する機構の解析を行った。その結果、転写調節因子TRIM27 とMRTF-B が、LCs 内で先導端における細胞間接着の喪失に反応して活性化し、マイクロRNA-124 (miR-124)の発現を抑制することを明らかにした。miR-124 はインテグリンベータ1 のmRNA を標的としてそのタンパク質合成を阻害することが知られているため、miR-124 の発現が抑制されることで、LCs においてインテグリンベータ1 の発現が増加することが判明した。一方、FCs では周囲を他の細胞に囲まれているために細胞間接着が失われず、LCs でみられたようなインテグリンベータ1 の発現上昇が起きなかった。この結果から、がん細胞集団内では細胞間接着の有無、ひいては細胞の位置に依存して、細胞が異なる遺伝子発現を示すことが明らかとなった。さらに、培養細胞株やマウスへの腫瘍移植モデルを用いた実験から、LCs でみられたインテグリンベータ1 の高発現ががん細胞の集団的浸潤および遠隔組織への転移に重要な役割を果たしていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん細胞の集団的移動において先導細胞内でのインテグリンベータ1の発現制御機構を世界に先駆けて明らかにした。がん細胞の集団的移動のメカニズムを解明する重要な一歩になったと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はがん細胞の集団的移動における先導細胞と後続細胞における遺伝子発現の違いをさらに詳細に明らかにすることにより、そのメカニズムの解明を目指していく。同時にがん治療の標的になる分子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
癌細胞集団における先導細胞と後続細胞での遺伝子発現の違いを明らかにするため、それぞれ純度の高い細胞からRNAを抽出予定であるが、まだ十分な細胞量を得られていない。両者の間の遺伝子発現プロファイリングなどの解析に必要としていた経費が次年度以降に必要となるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については癌細胞集団の先導細胞と後続細胞の間遺伝子発現の違いを解析するDNAマイクロアレイの費用および同定した遺伝子の発現、機能解析に使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] TRIM27/MRTF-B-dependent integrin β1 expression defines leading cells in cancer cell collectives.2014
Author(s)
Takuya Kato, Atsushi Enomoto, Takashi Watanabe, Hisashi Haga, Sumire Ishida, Yuji Kondo, Koichi Furukawa, Takeshi Urano, Shinji Mii, Liang Weng, Maki, Ishida-Takagishi, Masato Asai, Naoya Asai, Kozo Kaibuchi, Yoshiki Murakumo, Masahide Takahashi
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 7
Pages: 1156-1167
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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