2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26640077
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (80515065)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がんの発生・進展を制御する機構として、「細胞競合」と呼ばれる現象が重要な役割を果たすことが示されつつある。細胞競合とは、組織中の隣り合う細胞間で生体内環境への適応度を競合する現象で、競合の「勝者」が「敗者」を細胞死により排除してその場を占有する。最近の研究により、細胞競合は組織に生じた前がん細胞を組織から排除する「内在性がん抑制機構」として機能するほか、がん細胞が正常細胞を駆逐しながら増殖する「がん促進機構」としても機能することが示され、がんを正にも負にも制御する重要なシステムであると考えられている。しかしながら、その分子機構の詳細は不明である。その理由として、細胞競合を引き起こす分子群を網羅的に単離・同定するモデル系が存在しなかった点が挙げられる。研究代表者らは、細胞競合の分子機構を明らかにするために、細胞競合が継続的に観察される新規細胞競合モデル系の確立を行ってきた。このモデル系では、Gal4/UAS遺伝子発現システムを利用し、「野生型細胞がタンパク質の合成能が低い変異細胞Minute(リボソームタンパク質をコードする遺伝子に変異の入った一連の変異の総称)を細胞競合により組織から排除する」現象を継続的に引き起こす。この新規細胞競合モデル系を利用し、①細胞競合の「敗者」で機能する遺伝子群、および②「勝者」で機能する遺伝子群を網羅的に単離・同定する「in vivo RNAiスクリーニング」を効率的に行うために、本年度は細胞競合の効果がより顕著に観察されるGal4ドライバーのスクリーニングを行った。翅原基でGal4の発現をドライブすることが報告されている70種類のショウジョウバエ系統をスクリーニングした結果、①細胞競合の「敗者」で機能する遺伝子群、および②「勝者」で機能する遺伝子群を単離・同定するのに適したGal4ドライバーをそれぞれ決定することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞競合制御因子を網羅的に単離・同定する新規in vivo RNAiスクリーニングの確立に専念した。本スクリーニング系を利用することで、これまで明らかにされてこなかった細胞競合制御因子が効率的に同定されることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回確立した新規細胞競合スクリーニング系において、種々のRNAiライブラリー(約22,000種類)を発現させ、これにより細胞競合が促進あるいは抑制される個体をスクリーニングする。また、ライブイメージングを行うことで、細胞競合の時空間的解析を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は、「細胞競合を制御する分子機構解析」を遂行するにあたり、細胞競合の勝者および敗者で機能する遺伝子群を網羅的に単離・同定するスクリーニング系を確立することに専念したため、当初予定していた網羅的な遺伝学的スクリーニングを次年度開始することにした。そこで、その遺伝学的スクリーニングに要する経費を次年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝学的スクリーニングに必要なショウジョウバエ飼育用消耗品・炭酸ガス等の消耗品費として使用する。また、遺伝学的スクリーニングの実施・ショウジョウバエ飼育を補佐する技術補佐員を1名雇用する。
|