2014 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍形成にpH感知性受容体は機能しているか~受容体欠損マウスを用いた解析
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26640087
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
村田 直哉 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (00533473)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発がん / pH感知性受容体 / TDAG8 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍形成における宿主免疫・炎症細胞の役割を明らかにするため、OGR1ファミリー受容体、特にTDAG8受容体欠損マウスを用いて、化学発がん物質である3’-メチルコラントレン (3-MCA)の投与、あるいは、マウス由来がん細胞(メチルコラントレン誘発マウス繊維肉腫細胞株:MC57G)の接種を行い、腫瘍形成、生存、免疫・炎症細胞の集積などを指標に解析した。その結果、(1) 化学発がん物質3-MCAの投与後の腫瘍形成: 3-MCAをマウス背部に皮下投与すると、投与後10週前後から腫瘍形成(>500立方mm)を認めた。その発生率は野生型マウスでは9割以上であるのに対し、TDAG8欠損マウスでは発生率が半減した。腫瘍組織を採取し、腫瘍組織をホルマリンで固定した後に、免疫染色を用いて組織学的に検討したところ、腫瘍組織へのCD3+T細胞の浸潤が認められたが、その程度は野生型とTDAG8欠損マウスで明らかな違いを認めなかった。FOXP3+細胞(制御性Treg)でも同様の所見であった(2) マウス由来がん細胞(MC57G)の接種後の腫瘍形成:がん細胞をマウス皮下に接種し、毎週ごとに腫瘍を計測した。接種されたがん細胞は腫瘍を形成し、徐々に増大していくものの、その増大スピードは野生型とTDAG8欠損マウスで明らかな違いを認めなかった。(3)マウス由来がん細胞(MC57G)刺激により誘導される、がん細胞に対するマウス脾エフェクター細胞の細胞障害活性:マウスにMC57Gをインビボにて接種後、さらにマウス脾細胞を取り出し、さらにインビトロで刺激した。その結果、脾エフェクター細胞による細胞障害活性が野生型マウスに比べて、TDAG8欠損マウスにおいて増強している傾向を認めた。今後は、例数を増やし、また、低pH状態など条件を変えながら、TDAG8欠損マウスでの細胞障害活性の増強傾向を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TDAG8受容体欠損マウスを用いることにより、TDAG8が化学発がん物質による腫瘍形成に対して促進的に機能しているという結果が得られた。さらに、マウス脾エフェクター細胞を用いた細胞レベルの実験により、その促進効果は腫瘍に対する細胞障害活性の抑制による可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
インビボの実験で重要な結果が得られたので、さらに細胞レベルでの機能解析を精力的に進める。特に細胞障害活性について、まず生理的pH状態におけるTDAG8欠損マウスによる促進効果を確認し、さらに低pH状態による影響も検討する。また、脾エフェクター細胞としてCD8+細胞障害性T細胞の関与や、TDAG8受容体の細胞障害活性への抑制機構ついても検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度にはマウスを用いたインビボ実験や細胞レベルの実験に多少手間取ったことから、実験の進捗が遅れ研究費の繰越が生じた。しかし、今後は順調に実験を行えるものと考えているので、特に大きな計画の変更は考えていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
TDAG8が化学発がん物質による腫瘍形成に対して促進的に機能しているという結果が得られた。その促進機能について、TDAG8受容体が脾エフェクター細胞の細胞障害活性を抑制している可能性が示唆された。そのため、細胞障害活性に対するTDAG8受容体の生理的pH状態での抑制効果を、今年度も例数を増やして明らかにする。一方、腫瘍形成部位では細胞外pHが6.0程度の酸性状態であることが知られ、さらにTDAG8受容体は細胞外プロトン(pH)を感知していることから、低pH状態による細胞障害活性への影響も解析する。さらに脾エフェクター細胞からCD8+T細胞などを単離して細胞障害活性を測定することや、抗CD4,CD8抗体を用いた細胞障害活性に対する阻害実験も行っていく。またTDAG8受容体は通常Gs/cAMP経路に連関しているため、可能であればAキナーゼ阻害剤なども用いて解析する。
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