2015 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞由来の原始下部消化管幹細胞を用いた培養下発がん研究系の開発
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26640089
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
武藤 倫弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 室長 (30392335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | iPS細胞 / がん予防 / 発がん事象 / 3次元細胞培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
<目的>本研究は複雑な発がん過程を、正常細胞からの確率的な変化過程として捉え、in vitro環境下で実験的に再現可能かどうかを検証するものである。iPS細胞として樹立され、既に原始下部消化管幹細胞にまで分化誘導されていると推定される細胞集団を長期培養すること(平成26年度の達成目標)、さらに各種の変異誘発処理(化学発がん剤投与/放射線照射など)を行うことで、生体外培養環境下での発がんを、腫瘍学的各種実験が遂行可能なレベルの確率で起こしうる系を作成すること(平成27年度の達成目標)を目的としている。 平成27年度では、引き続き原始下部消化管株細胞にまで分化過程を進めた細胞を長期培養したが、コロニー作成やポリープ類似な立体構造の構築といった培養細胞形態観察レベルにおいては、腫瘍性変化を認めなかった。また、接触依存性増殖阻害や免疫不全動物への細胞移植ができないことなど、細胞はがん化していないことを確認した。 より高頻度/高確率に人為的処理下での発がん事象を起こすべく、放射線照射による確率向上を目的に、53経代培養後の細胞において、 5 Gyの放射線照射を行った。その結果、照射5ヶ月後より、紡錘形の明らかな細胞形態変化が見られ始めた。その為、前年度に選別した細胞分化マーカーを検討した所、非照射細胞と比べHES1の著明な低下が観察された。腸上皮細胞のマーカーであるCDX2、腸幹細胞マーカーであるLGR5も低下したが、c-Mycやcyclin D1などのWnt/beta-cateninシグナル伝達の下流の因子は変動が無かった。また、上皮マーカーであるCEACAM1やCDH1の低下を認めた。そのため、現在、上皮間葉変換に関わる分子挙動を検索すると同時に免疫不全動物への細胞移植による腫瘍性の評価を進めている。
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