2015 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌予防ワクチンの高感度効果測定法の確立と臨床応用
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26640096
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
遠藤 典子 (岩田典子) 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80546630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝崎 太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 分野長 (90300954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 子宮頸がん予防ワクチン / HPV |
Outline of Annual Research Achievements |
女性特有のがんとして世界で2番目に多い子宮頸癌は、高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)への長期感染が原因で発症することが解明された。この研究成果をもとに代表的な高リスク型HPVである16/18型に対する二価、さらに尖圭コンジローマの原因となるHPV6/11型を加えた四価ワクチンが開発され、日本でも定期接種となった。しかし副反応等が問題となり、その効果や安全性については議論が続いている。問題視されるようになった原因として、まず、効果を客観的に測定する系が確立していないことが挙げられる。故に製薬メーカーが示す3回接種が正しいのか、HPV感染予防効果は何年続くのか等、未だ結論は出ていない。そこで我々は、簡便かつ迅速に利用可能な子宮頸がん予防ワクチンの効果測定法を開発することとした。これまでに、血中HPV抗体価を測定するための簡易イムノクロマト法、およびマグネットビーズを利用した高感度ELISA法の第一世代を構築した。 本プロジェクト初年度では、第一世代の測定系により総計233例の血中HPV16/18抗体価を測定した。その結果、イムノクロマト法およびELISA法から得られたデータには相関性が認められた。しかし臨床現場からの要望が多い「膣分泌物による測定」には感度が足りず、課題が残った。 次年度は測定系の高感度化を目標に、イムノクロマト法では発色法の改善、ELISA法ではdirect法からsandwich法へのシフトを試みたところ、イムノクロマトは新規に開発したものより従来法の方が感度の点で勝った。ELISAにおいては前年度に引き続きsandwich法の構築に取り組んだが、感度の劇的な上昇には至らなかった。また測定に不可欠なHPV16/18タンパク質産生は、独自の方法で取り組んだが成功しなかったため、時間的制約を考慮して外注とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では初年度中に1) 測定系(イムノクロマト法、ELISA法)の高感度化、ならびに2) ヒト検体を用いた小規模臨床研究を行う予定であった。しかし非特異的反応やバックグラウンドの問題が解決できず、測定系の改善には至らなかった。そのため新規開発法ではなく、従来法でのみのヒト検体測定となった。 次年度は、引き続き測定系の高感度化に取り組んだが、抗原となるHPVタンパク質の劣化が原因で期待した成果は得られなかった。HPV16/18タンパク質産生については、独自の方法でのアプローチを試みたが成功に至らず、時間的制約を考慮して外注に出すこととした。現在は外注で得られたHPV16/18タンパク質の精製まで終了している。新規検体は、ワクチン副反応の問題が解決しておらず、入手は極めて困難な状況が続いている。ただし、イムノクロマトおよびELISAとも従来法での測定結果ではあるが統計解析が進み、成果を論文にまとめる作業も最終段階に入った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度となるため、まず計画の進行が滞っている測定系の高感度化について結論を出す。新たに入手したHPV16/18タンパク質は、精製後、ELISAによる発現の確認も終了しているためこれを利用する。 イムノクロマト法については、時間と人手の不足により蛍光法での開発は見送ることとし、簡易法の高感度化のみに集中して取り組んで行く。企業と協力しながらキットのプロトタイプを作製し、他機関でも使用してもらいフィードバックを受けながらより実用化に近づけるための改良を行う。 ELISA法は、引き続きdirect法からsandwich法への切り換えを進めて行く。早い段階から抗体、キャリアタンパク、検体希釈等についての条件検討を詳細に行い、血清ばかりでなく膣分泌液での測定が可能な系の確立を目指す。 イムノクロマト法、ELISA法いずれの場合も、特殊な機器や高度な技術を必要とせず、病院の検査科で一般的に使用できるレベルの仕様を目標としている。高感度化に成功した後は数百例を目処に実際の検体を測定し、検出法の評価を行う。得られた結果は学会や論文で発表する。
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Causes of Carryover |
前々年度は検体測定に必要な抗原タンパク質が劣化したため、計画が根本から遅延するという事態が発生した。材料調達や研究員のスケジュール調整の目処が立たず、前々年度中に抗原の産生は不可能で、必然的にすべての計画が先送りとなってしまった。次年度は、前年度に予定していた高感度測定系の確立、および論文・学会発表のために研究費の使用を見込んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度分の物品費予算は、測定系構築のための抗体等購入費に充てる。実検体測定後、結果は積極的に発表する予定で、論文投稿や校閲に掛かる費用、学会参加のための費用は繰越分を使用する。また今年度は設備備品ならびに人件費での支出は見込んでいない。
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