2014 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍増殖抑制に関わる血小板の機能解析と治療法の開発
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26640108
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
藤田 直也 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 所長 (20280951)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / 分子標的治療 / 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
血小板は、顆粒内増殖因子の放出などをはじめとする様々な機構により、腫瘍の増殖や転移を促進する。そこで、抗マウス血小板抗体を投与することで血小板減少症を惹起した担がんマウスモデルを作製し、その担がんマウスモデルでの腫瘍増殖を検討したところ、血小板が無いにも関わらず腫瘍体積が増大するという想定外の現象を観察した。そこで本研究課題では、血小板除去の際の腫瘍増殖に関わる分子機構を解明し、その分子機構を阻害する新たながん治療薬創製を目的に研究を行った。 (1)In vivoで増殖するヒトがん細胞株を移植したマウスに、抗血小板抗体あるいはコントロール抗体を投与し、移植後22日目に腫瘍を摘出した。摘出したヒト腫瘍からmRNAを抽出し、常法に従ってマイクロアレイ解析を行なった。その結果、GO解析でepithelium/epidermis development、epithelial/epidermal cell differentiation、peptidase activityなどに関わる因子が変動したものが上位にリストアップされ、がん細胞の運動能、接着能などの性質の変化が示唆された。 (2)抗血小板抗体投与による血小板除去により、腫瘍内環境がどのように変化するのかを検討するために、腫瘍の凍結切片を作製し、血管内皮マーカーCD31を認識する抗体での免疫染色を行った。その結果、腫瘍内における血管増生が認められた。よって、血管新生が血小板除去時の腫瘍増大に関与している可能性が示唆された。 (3)本研究で用いたがん細胞株は、in vitroでの血小板との共培養で増殖が促進される。がん細胞上の増殖因子受容体の発現を解析したところ、幾つかの受容体発現を確認した。そこで、抗体投与時に破壊される血小板から遊離する増殖因子が腫瘍増殖に関与している可能性を検討するために、血中増殖因子などの定量を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血小板減少症を惹起した担がんマウスモデルより、移植していたヒト腫瘍を回収し、ヒト腫瘍における発現変動遺伝子群の絞り込みを行った。個別の腫瘍間でのバラツキも多かったため、特定の遺伝子への絞り込みまでには至らなかったが、GO解析で、がん細胞の運動能、接着能などに関連する遺伝子が濃縮されることを見出すという当初の目的は達成できた。また、免疫染色の結果から、予想通りに腫瘍血管の増生が確認できた。血中サイトカインや増殖因子のBio-Plexによる定量は、研究費との関係から平成26年度には遂行できなかったが、がん細胞膜上の増殖因子受容体の発現検討を行うことで、血小板から遊離すると予想される増殖因子の受容体の一部の発現が確認できた。以上のように、予定していた研究目標は概ね達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究を継続しつつ、血小板除去に伴い発現変動する増殖因子の同定を目指した研究を進め、その増殖因子受容体を標的にした阻害剤探索を行う。
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