2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26640112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
左子 芳彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60153970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 天士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80305490)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超好熱古細菌 / Aeropyrum属 / ゲノム解析 / ゲノム進化 / ゲノム縮小化 / 溶原化ウイルス / エピソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
Aeropyrum属古細菌は、当研究室が浅海・深海熱水孔より世界に先駆けて見出した超好熱古細菌である。本研究では、本古細菌をモデルとして、3つの超生物界の一角を担う古細菌において、ウイルスによって駆動されるゲノム進化過程を解明する。今年度の成果は以下のとおりである。 1)鹿児島県山川温泉・長崎県小浜温泉と橘湾および静岡県下賀茂温泉より得た計22株の本属古細菌のドラフトゲノムを得て比較ゲノム解析を行った。本種が地理的に離れた地点ごとで独立したゲノム進化をすると示唆された。また、地点ごとのゲノム多様化様式には、現在も進行している株特異的なゲノム縮小化とウイルスとの相互作用によってもたらされるゲノム多様化が大きく影響すると考えられた。一部の株では遺伝子重複が頻繁に起こっていた。 2)昨年度見出した新規溶原化ウイルスに由来する配列は、宿主のドラフトゲノム配列上に見いだされなかった。しかしながら、誘導条件下では最大約102コピー/宿主ゲノムのウイルス由来配列が認められ、本ウイルスは宿主ゲノムよりもコピー数の小さいエピソームとして宿主内に維持されるが、誘導条件下で急速に複製されると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで報告のない静岡県下賀茂温泉から本種株を分離し、ゲノムを解読することに成功した。ゲノム類似度を比較し、本菌ゲノムにおける地域的なバリエーションを明らかにした。また、本菌溶原ウイルスの増殖過程を明らかにすることに成功し上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き新規分離株の取得とゲノム解読を進めるが、比較ゲノム解析の精度を上げ本属古細菌の祖先型からゲノム多様性が生じた過程を予測する。新たに見出した本種ウイルスの論文報告のための性状解析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は研究2年目に当たり、引き続きAeropyrum属超好熱古細菌やウイルスの分離を行うとともに、それらのゲノムシーケンスを行った。DNAシーケンスのための分析試薬は高額であるが、失敗を可能な限り減らして効率的な試薬の使用を心掛け予定より経費が節約できたため、次年度使用額が生じた。一方各地から試料の採取を行うとともに、学会発表を行ったため、旅費を比較的多く使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、鹿児島県山川熱水環境周辺や伊豆の温泉より環境試料の採取を行って、さらにAeropyrum属古細菌の分離を行う。次に単離した株の全ゲノムシーケンスを行って、詳細なゲノム解析を進める予定である。そのため、旅費、培養関連試薬、DNAシーケンス関係の試薬の購入に経費を使用する予定である。
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